著者
木俣 美樹男 阪本 寧男
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.p103-111, 1982-08

目本産力モジグサ属植物のうちで,雑草性の高いカモジグサ(Agropyron tsukushiense var. transiens)の普通型と早生生態型およびミズタガモジグサ(A humidorum)について,繁殖様式と生育場所との相互関係について検討した。これら2種が同所的に生育する静岡県三島市の休閑困における野外調査によると,カモジグサの早生生態型は種子でのみ実生を生じさせていたが,ミズタガモジグサは種子および桿の断片から実生を生じさせていた(第1表)。早生生態型の桿の断片は越夏後に腐敗して萌芽せず,ミズタガモジグサではほぼ半数の桿の断片が萌芽していた(第2表)。ミズタガモジグサの桿はほぼ7節よりなっているが,水岡耕起の際に1〜3節をもつ断片にされることが多かった。桿の断片は3節をもつものがもっともよく萌芽していた(第3表)。ヵモジグサの普通型と早生生態型およびミズタガモジグサの種子を温度および水条件による14の処理区に貯蔵し,経時的に発芽試験を行なった(第1図)。この結果によると,カモジグサの普通型は畑条件下でよく発芽し,早生生態型は州および湛水条件下でよく発芽した。ミズタガモジグサは種子の休眠が深く,湛水条件下でも比較的よく発芽力を維持した。カモジグサの普通型と早生生態型およびミズタガモジグサの桿の1節をもつ断片を温度および水条件による8処理区に貯蔵し,経時的に萌芽試験を行なった(第2図)。この結果によると,カモジグサの普通型および早生生態型の桿の断片の腋芽は休眠性が弱く,7月にはほとんどが萌芽した。しかしながら,ミズタガモジゲサの桿の断片の腋芽は休眠性が強く,9月まで著しい萌芽カミみられなかった。これらの結果は,休閑田における野外調査の結果とよく一致した。すなわち,カモジグサの早生生態型の株は休眠性が弱く湛水下で腐敗し,多年生であるにもかかわらず,自然状態では一年生植物のように種子によってのみ繁殖する。普通型は,種子が湛水・高温条件下で腐敗するので畦より水田中には侵入できない。ミズタガモジグサは種子のほか,株および多年生化した桿によっても繁殖し,水田への適応性が認められた。

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