- 著者
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佐藤 武
武市 昌士
- 出版者
- 社団法人日本東洋医学会
- 雑誌
- 日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.3, pp.453-458, 1995-11-20
- 参考文献数
- 7
- 被引用文献数
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精神分裂病の向精神薬療法中に, 抗精神病薬の効果がない症例や抗精神病薬の減量を希望する症例に大柴胡湯の併用を試み, 経過良好であった3症例を経験した。 症例1 (22歳・男性) では, 複雑な環境で育ち, 幻聴などの異常体験や思考障害に加え, 対人場面での異常な緊張症状に悩んでいたが, 大柴胡湯の服用後より頭につっかったものが取れると語り, 漢方薬だけの投与で現在に至っている。 症例2 (26歳・男性) では, 幻聴や被害関係妄想などの知覚や思考障害はないが, 「首が痛い, 回らない, 首筋に音がする」というセネストパチーを主症状とし, 5年間経過した患者で, 大柴胡湯投与後, 首の違和惑が軽減し, 漢方薬のみの処方に至った例である。 症例3 (29歳・男性) は大柴胡湯の投与で抗精神病薬が減量できた症例である。 以上の症例を中医学的にみて「肝火旺」の現象に求めるなら, 大柴胡湯は最も有効な漢方薬であると考えられた。