- 著者
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影山 太郎
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 国語学 (ISSN:04913337)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.1, pp.44-55, 2002-01
「指揮者,作者,該当者」のような動作主名詞は,名詞でありながら動詞的な概念を内包する点で理論的に興味深い。本橋では,まずPustejovsky(1995)の英語分析を参考にして,動作主名詞を,恒常的な機能(特質構造の目的役割)によって規定されるものと行為の成立(主体役割)によって規定されるものに分類するが,この二分法では「参加者,該当者」などが扱えないことが判明する。この第三のグループは,「この件は該当者がある」のような存在文では関係節(「該当する人がある」)と並行的に出来事の発生を表し,また,「本件|該当者」のように句アクセントの複合語(語^+)にも参加する。このような統語的性質は特質構造より語彙概念構造に委ねるのが妥当である。この分析によって,1つの同じ接辞が語彙部門の様々な構造に適用されることになり,派生語全体の意味や統語的性質は適用レヴェルの特性から自動的に導き出される。