著者
影山 太郎
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー (ISSN:21850119)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.5-27, 2010-05

世界諸言語の中で日本語は特殊なのか,特殊でないのか。生成文法や言語類型論の初期には人間言語の普遍性に重点が置かれたため,語順などのマクロパラメータによって日本語は「特殊でない」とされた。しかし個々の言語現象をミクロに見ていくと,日本語独自の「特質」が明らかになってくる。本稿では,世界的に見て日本語に特有ないし特徴的と考えられる複合語(新しいタイプの外心複合語,動作主複合語など)の現象を中国語,韓国語の対応表現とも比較しながら概観する。
著者
影山 太郎 Taro Kageyama
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.83-101, 2006-05-25
著者
影山 太郎
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

英語と日本語における語彙の意味構造と構文的用法の検討を通して,動詞・名詞・形容詞を柱とする総合的なレキシコン(辞書)理論の開発を行い,14篇の論文を3部構成にして研究成果報告書をまとめた。第I部「統語論とレキシコン」(3篇)では,形態論の規則が語彙部門だけでなく統語部門でも成立すること,語と句の境界に「語+」という特別の範疇が存在すること,項の受け継ぎ現象が動詞の語彙概念構造および名詞の特質構造によって説明できることを明らかにした。第II部「動詞の意味構造とレキシコン」(5篇)では,動詞の自他交替が反使役化,脱使役化,使役化,場所表現の取り立てなどの意味操作によって行われることを示し,英語と日本語の相違を明らかにした。また,語彙概念構造における物理的位置と抽象的状態の表示形式に基づいて,言語体系と心理的外界認知とが異なることを明らかにした。第III部「名詞・形容詞の意味構造とレキシコン」(6篇)では,名詞および一部の形容詞の意味を検討し,語彙概念構造を特質構造に組み込む表記方法を提示した。これによって,動詞が名詞化された場合などで,動詞の意味構造と名詞の意味構造のつながりが明確化される。また,一般的な語形成規則によるのではなく,言語の創造性によって生じる偶発的な造語を特質構造で処理することを検討した。更に,英語が特質構造内部の主体役割や目的役割にかなり自由に言及できるのに対して,日本語はそのような意味操作が乏しく,複合語などの形態を重視することを指摘した。しかし名詞・形容詞に関する考察はまだ荒削りで,今後,副詞などの品詞も含めて更に精緻化を進めていく必要がある。
著者
影山 太郎
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー (ISSN:21850119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.8-18, 2014-06

日本語の語形成の中でも言語類型論の観点から注目される2種類の複合動詞-名詞+動詞型と動詞+動詞型-の性質を述べた。名詞+動詞型の複合動詞については,時制付きの定形文では生産性が低いが,動詞が時制のない非定形になると生産性が増すことを指摘した。これは,複統合型言語の名詞抱合には見られない制約である。他方,動詞+動詞型複合動詞の特異性は,前項動詞が後項動詞を意味的に修飾する「主題関係複合動詞」ではなく,前項動詞が複合動詞全体の項関係を支配し,後項動詞は前項動詞が表す事象に対して何らかの語彙的アスペクトの意味を添加するという特殊なタイプの「アスペクト複合動詞」に求められることを様々な考察から論じた。
著者
影山 太郎 Taro Kageyama
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.99-115, 1996-02-20
著者
影山 太郎 Taro Kageyama
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.117-132, 1998-09-20
著者
影山 太郎
出版者
関西学院大学
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.74-87, 2003-05-10
著者
影山 太郎
出版者
関西学院大学
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.45-61, 2006-09
著者
影山 太郎
出版者
日本語学会
雑誌
国語学 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.44-55, 2002-01

「指揮者,作者,該当者」のような動作主名詞は,名詞でありながら動詞的な概念を内包する点で理論的に興味深い。本橋では,まずPustejovsky(1995)の英語分析を参考にして,動作主名詞を,恒常的な機能(特質構造の目的役割)によって規定されるものと行為の成立(主体役割)によって規定されるものに分類するが,この二分法では「参加者,該当者」などが扱えないことが判明する。この第三のグループは,「この件は該当者がある」のような存在文では関係節(「該当する人がある」)と並行的に出来事の発生を表し,また,「本件|該当者」のように句アクセントの複合語(語^+)にも参加する。このような統語的性質は特質構造より語彙概念構造に委ねるのが妥当である。この分析によって,1つの同じ接辞が語彙部門の様々な構造に適用されることになり,派生語全体の意味や統語的性質は適用レヴェルの特性から自動的に導き出される。
著者
影山 太郎 Taro Kageyama
雑誌
人文論究 (ISSN:02866773)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.19-36, 2007-09-25