- 著者
-
守永 誠治
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 三田商学研究 (ISSN:0544571X)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.6, pp.1-11, 1993-02-25
国家が成立してから今日まで約5000年の歴史があるが,その会計は現金主義によるものであって,収入と支出における絶対的真実性が求められている。このような会計システムは財政学の研究対象であるが,今日会計学の研究対象としての現金主義会計は宗教法人等の非営利組織体に求められている。一方,複式簿記が生成した時代から会計は未収金や未払金のような経済の事実に基づいて把握される発生主義会計が起ってくるのであるが,この時期は丁度,コロンブス(Columbus)による新大陸への航海の時代で1492年と機を一にしており,ルカ・パチオリ(Luca Pacioli)のズンマ(Summa)が1494年に出版されている。15世紀末における会計は公開という程のものではなかったが,資本主義の発達と手を携えて展開したのであった。それは株大会社の生成以後,必然的に企業会計の公開が求められるようになった。また産業革命以後における企業の発展は信用経済における会計の複雑化のみならず,設備資産の減価償却等を通して相対的真実性がますます求められるようになってきたのであった。19世紀に工業化を果した先進諸国は帝国主義政策をとり,会計もこれと歩調を合せて発展してきたが,20世紀前半でファシズムによる全体主義国家が崩壊すると,次第に会計の公開が求められてきたがこれは民主主義との関連で論じられるようになってきたのであった。20世紀の後半にイデオロギーの支配が崩れると共にグラースノチス(情報公開)が強く求められるようになったが,これはそれぞれの国の民族の問題が経済の問題と絡み合って国際的会計基準の統一は新らしい課題と遭遇することとなった。特に,わが国における会計の公開の問題は特有の面を持っていることを論じている。