著者
一棟 宏子 萩原 美智子 中野 迪代 若井 希水子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
no.43, pp.163-170, 2006-03

住宅性能表示制度は、消費者が住宅取得に際し合理的な選択の目安をつくる目的でH12年に実地された。今日まで評価住宅の実績は増えているが、H16年は新築住宅全体の13.7%、当初の目標を下回り低調である。業態による実績は不明だが、大手ハウスメーカーが積極的に利用する一方、設計事務所・中小工務店の利用が少なく、業態で相当偏りがあると推察される。 当初から問題点が指摘されてきたが、制度が発足した以上、消費者に役立つ有効なツールとなることが望まれる。それには全ての業態に公平な選択の機会が与えられることが大切であり、その観点から、本研究は制度の利用状況を再検討する。 今回は研究対象を戸建て住宅に限定、最も利用が少ないと思われる注文住宅建設に係わる設計事務所調査と関係者へのヒアリングとアンケート調査を行い、制度の普及が進まない要因を検討した。それらに基づき、消費者が制度を利用し適切な住宅選択を行う過程で設計事務所が担う役割について考察した。調査期間は2004年12月から2005年3月であった。 (1)型式認定を利用する量産住宅ではコスト・業務量が抑えられ、多く利用されている。(2)設計事務所の利用は少ない。施主との接触が多く、信頼関係を築けるので安心確保の費用対効果としてはメリットが少ないと敬遠している。(3)コストと申請手続きの負担感が大きい。(4)任意制度を肯定する率が高い。(5)制度の限界・問題点を含めて公正でわかりやすい情報提供が不足、消費者が主体的に判断し難い。(6)制度利用に消極的な事務所も多く、業者への情報も不足している。 制度の改善には、性能項目の個別選択システムを構築し、検査や申請書類の業務量をスリム化して、適切な価格で利用できる方法を確立すべきである。さらに、建築士が本制度の利点を認識し、専門家として建築主に本制度を的確にアドバイスできるよう情報面からの支援体制を整備することが必要であろう。

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住宅性能表示制度における消費者支援への課題--戸建て住宅における設計事務所の役割と制度利用に向けて https://t.co/24O5JLVO4f

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