- 著者
-
諸上 茂光
- 出版者
- 国際ビジネス研究学会
- 雑誌
- 国際ビジネス研究学会年報
- 巻号頁・発行日
- no.11, pp.77-88, 2005
日本では長らく広告にコケージアン・モデルを起用することの有用性が一種の定説とされ、実際に多くの広告でコケージアン・モデルが起用されていることが報告されている。一方、近年では、経済と企業活動のグローバル化がますます進んでおり、日本市場でも国内企業と外国企業の境界が一層あいまいになりつつあり、日本人の外国人や外国企業に対する意識も年々変わってきている。このような状況にも関わらず、現代の広告においても、コケージアン・モデルを起用した広告の割合は高いまま推移していることが報告されている。本研究では、日本での国際ビジネス環境の変化に鑑みて、改めて、日本人モデルとコケージアン・モデルの広告効果について検証し、日本におけるコケージアン・モデル優位仮説に基づく現代の広告作成の妥当性について考察した。本研究では、魅力度のほぼ同じコケージアン・日本人のモデルを用いた場合、(1)これまでの研究から推測されるように、読者の認知処理(広告要素の閲読方法や記憶正確度)は変わらないのか、(2)その一方で、商品や広告自体に対する印象、購買意欲といったような読者の心理的効果には差が見られるのか、についてペンタブレット装置を用いた視線追跡実験およびアンケート調査により検証した。実験の結果から、モデルの魅力度が同じ場合、モデル顔画像への最初の注目度、顔画像と重要な広告要素(商品名)との距離とその要素の記憶正確度の関係を調べた認知的実験では予測どおり、コケージアン優位性が認められなかった。また、コケージアン・モデル使用の心理効果については、従来の研究から予測されるとおり、高関与製品については、かなり明確なコケージアン優位性が認められた。一方、低関与製品についてはわずかな項目についてコケージアン優位性が認められただけである。このことから、現代広告の作成における効果的な外国人モデルの起用方法について、目的に応じて、認知的知見と心理的知見をうまく組み合わせる必要があると考えられる。