- 著者
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中内 基博
- 出版者
- 早稲田大学
- 雑誌
- 産業経営 (ISSN:02864428)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, pp.21-36, 2004-12-15
本稿は,ベンチャー企業が成長に伴って,起業家型マネジメントからプロフェッショナル・マネジメントへ移行する際のトップ・マネジメント組織のあり方を探求したものである。先行研究は,組織の成長とともに創業社長の能力不足が顕著となることから,それにあわせて創業社長はプロフェッショナル・マネジャーに交代すべきと主張してきた。しかし,そうした実証結果は一致した結論を得ていない。本稿では組織の成長に合わせた創業社長交代の議論を精緻化するにあたり,戦略的意思決定主体を社長という個人からTMTというチームへ拡張する。そうした場合,組織の成長に合わせてTMTの能力不足を補うことができさえすれば,創業社長の交代は必ずしも必要ではないと考えるのである。ここで,TMTの能力不足を補う鍵となるのは適度な新メンバーの加入比率と創業メンバー比率である。新メンバーは新しい知識や経験を有していることから,TMTのマネジメント能力を向上させる可能性がある。また,創業メンバーは,創業社長の理解者として創業社長をサポートすることが期待される一方で,変化への抵抗を示し,新しいスキルの習得を妨げる可能性がある。したがって,それらの適度なバランスがパフォーマンスを高めるためには重要であると考えられるのである。