- 著者
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野坂 和夫
- 出版者
- 早稲田大学
- 雑誌
- 産業経営 (ISSN:02864428)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, pp.71-81, 2004-12-15
会計の2005年問題の中で,日本企業にとって最も大きな問題となるのは,業績報告であろう。現在,IASBから提案されている業績報告の基本様式には,日本基準に存在する当期純利益の項目が存在しないからである。したがって,IFRSと日本基準との間には,業績報告における利益概念に大きな相違が存在する。このような会計環境に鑑みて,本稿では,業績報告における利益概念を考察する。具体的に,業績報告における利益概念が備えるべき機能を,投資家に対して投資意思決定に有用な情報を提供するという「意思決定有用性」,投資家に対して利益配当に関する情報を提供するという「配当可能性」,および,経営者が企業内容開示責任を負い投資家が投資意思決定について自己責任を負うという,証券市場での責任分担原則を維持する「業績報告と企業評価の区分明確化」の三機能に区分して,業績報告における利益概念を考察する。