著者
小林 大二 高橋 祐一 山本 栄
出版者
日本橋学館大学
雑誌
紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.15-29, 2006-03-30
被引用文献数
4

日本は65歳以上の高齢者が人口に占める割合が高い高齢社会である.政府や地方自治体では,高齢者が公共サービスを自宅で受けられるようにするために,インターネット主体の情報ネットワークを整備しているが,依然として多くの高齢者が生活に必要な公共サービスや年金などの情報を入手することが難しいのが現状である.例えば,高齢者の20%以上はインターネットに接続できる環境にあるが,ウェブページなどから情報を取得することが難しいと感じている.この理由として,非英語圏に住む日本の高齢者がパソコンのキーボード操作に慣れていない点や,高齢者の心的特性やウェブページのアクセシビリティが確保されていない点などが挙げられる.本研究では,高齢者がウェブページを通して情報を収集する際のアクセシビリティに着目し,現在の高齢者が抱えるウェブ閲覧における難点を明らかにした上で,その改善案を提案した.まずは高齢者がノートパソコンとマウスを用いてウェブを閲覧した際に経験するマウス操作の問題点を明らかにした.次に,ウェブページにあるリンク対象にマウスカーソルを合わせることが難しい問題の要因を探った.さらに,高齢者に画面内の9箇所をクリックさせる実験を行い,リンク位置とリンク対象の大きさがマウス操作に与える影響を探った.これらの実験では,独自に開発したソフトウェアを用いて高齢者のマウス操作を記録した.以上の実験を通して,ウェブ閲覧を難しくする高齢者のマウス操作の実態が明らかになった.そこで,高齢者のマウス操作を,より確実にするためのアクセシビリティ・ツールを開発した.このツールは,マウスカーソルを正しいリンク位置へ戻す機能,クリックするリンク対象を拡大表示する機能,クリックに必要なマウスの左ボタン以外のボタンを無効化する機能によって構成した.アクセシビリティ・ツールの有効性を検証した結果,このツールによってウェブ閲覧の難点が取り除かれる可能性が高いことが判った.

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