著者
ラウアー ジョー
出版者
広島大学
雑誌
広島外国語教育研究 (ISSN:13470892)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.19-34, 2002-03-31

近年のマルヂメディアの発展は学生の英語文法能力の向上にとって非常に大きな可能性を提供している。レスポンスの早いインターネット上のリンク,音声認識,ビデオ,画像,ディジタル録音などの技術は英語教育に統合されつつあり,学生がより早く,より少ない努力で学習するという理想に到達することも夢ではないかもしれない。こうした技術は,スピーキング(Eskenazi, 1999; Coniam, 1999),リスニング(Umino, 1999; Brett, 1997),語彙獲得(Cummins, 1998; Grace, 1998)そしてライティング(Liaw, 1998; Braine, 1997)などの英語教育の様々な分野に応用されつつある。しかし,日本人の英語文法の学習を助けるようなマルチメディア教材は市場において決定的に不足している。また,高品質なマルチメディア英語文法学習教材の開発のための基礎として役立つと思われるが,学生の文法能力の教室における調査の量も十分とは言いがたい。文法の能力が言語の習熟にとってもっとも決定的な観点である(Bardovi-Harlig, 1999)ということ,また文法についての明示的な指導が学生にとって役立つ(Ellis, 1998)ことが知られているにも関わらず,文法に関連した調査と教材の不足は現として存在しているのである。本研究の目的は,1)マルチメディアが英語文法学習の現状にどのように貢献しているかを改めて調査すること,および2)日本人大学一年生の英語文法能力を記述することの2つである。大学一年生の英語文法能力に関しては,いくつかの重要な結果が得られた。たとえば,マルチプルチョイステストの際に,学生は,主語+動詞(be動詞以外)+補語(現在分詞・過去分詞)や分詞構文の同定が苦手である。それに対し,lt+be/seem+thatで始まる節,および名詞句や名詞節の代用として使われる代名詞のitなどの文法構造はかなりよく認識している。これらの発見はマルチメディア教材の設計と開発の際の基礎として役立つものとなろう。

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