著者
木村 昭郎 田中 英夫 早川 式彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

原爆被爆者の高令化に伴い、骨髄異形成症候群(MDS)の増加がみられているが、当血液内科において過去15年間に診断されたMDSの病型診断を確定し、個人線量は当研究所の開発したABS93Dを用いてCox比例ハザードモデルにより統計学的解析を行った。その結果、個人被爆線量が得られたMDS例は26例であり、被曝線量反応関係を明らかにした。すなわち1 Sv被爆の0 Sv被爆に対する相対リスクは2.4であり、被曝線量反応関係に影響する因子として、被爆時年令を明らかにした。被爆者MDSの遺伝子レベルでの異常を明らかにするため、分化型急性骨髄性白血病の原因遺伝子として同定され、二次性白血病にも関与している可能性が指摘されている転写因子AML1遺伝子に注目し検索をすすめた。AML1遺伝子内のラントドメインの変異をPCR-SSCP及び塩基配列決定により検索したところ、非被爆者MDSでは74症例中2例(2.7%)に変異が認められ、これまでの報告と同程度の頻度であった。しかし、原爆被爆者で低線量被曝を受けたと推測されるMDSにおいては、13症例中6例(46%)と高頻度に点突然変異が認められた(ミスセンス3例、ノンセンス1例、サイレンス2例)。これらの点突然変異体について二量体形成能、DNA結合能、転写活性能についての解析を実施した。これらの結果より放射線関連MDS/AMLにおいてAML1の点突然変異が関与していることが明らかになった。次にMDSの病態には遺伝的不安定性が関与していると考えられるが、患者の単核球について、4種類のDNA修復酵素の遺伝子(ERCC 1,ERCC 3,ERCC 5,XPC)発現を検討したところ、低下〜消失した症例を高頻度に認め、MDSの病態に関与することが示唆された。
著者
入戸野 宏 小森 政嗣 金井 嘉宏 井原 なみは
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

“かわいい(kawaii)”は日常生活でよく使われる言葉であり,日本のポップカルチャーの代表ともいわれる。本研究では,“かわいい”を対象の属性ではなく,対象に接することで生じる感情であると捉え,その性質と機能について質問紙調査と実験室実験を用いて検討した。その結果,“かわいい”は,好ましい人やモノを“見まもりたい”“一緒にいたい”という接近動機づけに関連した社会的なポジティブ感情であり,主観・生理・行動の3側面に影響を与えることが明らかになった。
著者
戸梶 亜紀彦
出版者
広島大学
雑誌
広島大学マネジメント研究 (ISSN:13464086)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.27-37, 2004-03-19
被引用文献数
3

人間は, さまざまな経験をとおして成長・発達していく。そして, 個々の体験から, 何らかの影響を受け続ける。特に, 強烈な情動を伴った出来事の影響は強いと考えられる。そこで本研究は, 「自分の何かを変えた感動的な出来事」について調査を行い, 感動の効果に関するメカニズムについて詳細な検討を行った。その結果, 感動には大きく分けて, 動機づけに関連した効果, 認知的枠組みの更新に関連した効果, 他者志向・対人受容に関連した効果という3つの効果のあることが示された。また, 感動体験は, 単に個人の何かを変化させる契機となるだけではなく, 出来事に対する総合的な評価を背景とした外的事実の成立の瞬間と, 心身の感覚および認知的作用の相乗効果とが重奏的に作用して, 個人の何かを変化させた出来事をより印象的な事象として記憶の貯蔵庫に精緻化して各効果を増強し, 持続させる役割を果たし, さらに, 個々人の問題意識に関連するような潜在的および顕在的目標行動を始発させる契機となっているという可能性が示唆された。これらの結果に基づいて, 感動的体験の応用可能性について論じられる。
著者
渡部 芳栄
出版者
広島大学
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.153-168, 2015-03

Public University Corporations (PUCs) are founded by local governments to provide higher education, research, and social services efficiently and effectively. The number of PUCs in Japan has been increased since 2004 when the PUC system was begun, and now there are 65 PUCs in 2014. This article examines a total of ninety eight Mid-Term Plans of PUCs to investigate how local governments calculate Management Expenses Grants (MEG) and how much they intend to actually allocate the grants to PUCs. Comparing ninety eight Mid-Term Plans reveals the difference in the proportion of MEG to revenue by the year when they were incorporated. PUCs incorporated between 2005 and 2006 experience relatively deep cuts of MEG nevertheless the average proportion of MEG in the first Mid-Term Goal period. On the other hand, PUCs incorporated between 2008 and 2010 have a relatively high proportion of MEG in the first Mid-Term Goal period. Whether their founders reduce, maintain or increase MEG in the future should be investigated. Also one finds that one third of corporations adopt a variety of coefficients in the calculation of MEG. The various coefficients have various influences on PUC: coefficient of parts of expense items may have less influence and that of MEG itself probably have more influence. Local governments and PUCs should realize and consider the influence and significance of coefficients.本研究はJSPS科研費 25870082(「教育の質保証時代における公立大学法人運営の研究」(研究代表者 渡部芳栄)), 25285236(「大学経営の基盤となる財務情報の戦略的活用に関する研究」(研究代表者 水田健輔))の助成を受けたものである。
著者
ポスト デイヴィッド スタンバック エイミー ギンズバーグ マーク ハナム エミリー ビーナヴォット アーロン ビョー クリス 福留 東土[監訳] 三代川 典史[翻訳]
出版者
広島大学
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.319-335, 2013-03

英語の"Rank"には二つの意味がある。Shakespeare が『ハムレット』を著して以来,この単語はその第1幕にある,順番を付けられ階級化された序列体系を意味するとともに,第3幕で使われる,「腐敗した」「穢れた」という意味を持つ1)。今日,世界中の大学のテニュア(終身在職権)審査委員会や図書収集担当司書にとって,第1幕での序列体系を示す"Rank"はお馴染みである。だが,第3幕で使われる"Rank"の概念も理解しうるだろう。"Rank"の持つ二つの意味が関連性を保持しているのは,「インパクトファクター(論文の影響力を示す指標)」を学問評価の最適な手法と考え,その普及を促進するトムソン・ロイターのような商業ビジネスのおかげだともいえる。 本稿では,学術出版,大学,研究者の評価にインパクトファクターやランキングが利用されるのは,次の4つの動向に関連していることを論ずる。①官僚主義的権威の特徴である専門知識の(不可逆的な?)正統化,②高等教育の規制と管理を巡る駆引き(新管理主義と研究評価制度に如実に顕れる)③この2つの動向に便乗して商業的学術出版界が行う価格設定や資金調達。この動向は大学図書館の予算を侵食する高額課金に顕れる。④学術誌や編集者に期待されるドラマ的演出の拡大。これは,学術誌や編集者が履歴書製造工場の生産ラインの従業員ではなく,思想を賑やかに楽しく語り合う場のホスト役を自認する場合にもあてはまる動向だ。本稿はこれら4つの動向に言及した後, その動向の中に筆者が編集者の立場で携わる『比較教育学研究(Comparative EducationReview)』(以下『CER』)を位置づける。そして,学術誌が選択し得るオプションを考察する。著作者の履歴書に加えられることを目的とする論文ばかりの学術誌もあるが,それとは異なる,より活気に溢れ関わり合いを深く持つように教育学研究のコミュニティを発展させる方法を提案したい。その上で,インパクトファクターという指標の代替手段,或いはその補完に活用しうる,学術誌のクオリティ(以下「質」)を判断する手段を提案する。学術論文は学術コミュニケーションの副次的成果に過ぎないのだ。我々の主張は,最も根本的な成果としての学術コミュニケーションそのものに,学術誌とその読者が固有の価値を見出し,このコミュニケーションに関与すべきである,ということだ。In English the word "Rank" has a double meaning: a "hierarchical series" and also "rotten" or "filthy." This essay considers the pressure felt by scholars publish in journals that are highly "ranked." We first document evidence for this pressure, then discuss the consequences of impact factors and ranking in higher education. We connect ranking four movements: 1) the rationalization of expertise as a feature of Weberian bureaucratic authority; 2) the politics of higher education regulation and control, as manifest in the new managerialism and associated research assessment exercises; 3) the pricing and finance of commercial scholarly publishing, which takes advantage of the preceding developments by charging high prices to maximize profits; 4) decisions by editors and their journals to play by the new rules even when they are personally opposed to them and when they value journals for a different purpose. After touching on these four movements, we discuss the journal that we edit (Comparative Education Review). We consider the alternatives to ranking, and we suggest ways to promote a more vital and engaged educational research. Specifically, we suggest a means to judge the quality of scholarly journals that could be used as an alternative, or supplement, to the metric of the impact factor alone, by considering articles as the by-products of scholarly communication. We advocate that journals and readers attend to the intrinsic value of that communication as the most fundamental product.
著者
市川 浩 梶 雅範 小林 俊哉 小林 俊哉
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「科学アカデミー」の実践機関としての,現代にいたるまでの存続は,ロシア・ソヴィエト科学発展のもっとも特徴的な枠組みのひとつとなっている.本研究において,われわれは科学アカデミーを存続させた歴史的諸要因の解明につとめた.最近,さまざまな文書館で公開された,かつての機密資料の研究のおかげで,科学史の分野においても,伝統的なロシア/ソヴィエト社会にたいする伝統的な全体主義モデルはより多元主義的な見方に取って代わられつつある.3年間の活発な研究活動を通じてえられた研究成果は,さまざまな歴史的瞬間において権力に対抗してしめされた科学者のイニシァティヴや主体性を確認するものとなり,結果として,上述した,われわれが現在目撃しているロシア/ソヴィエト科学史研究における重要な変化を補強するものとなっている.
著者
冨山 毅 重田 利拓
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

二枚貝の水管はカレイ類の稚魚にとって再生可能な食物として利用されることから、カレイ類による水管の利用実態および二枚貝水管の再生力を評価した。広島湾周辺の干潟域においては二枚貝の分布密度が低く、水管はわずかに利用されるだけであったが、仙台湾周辺の干潟域では高い割合で利用されていた。また、水管の短いアサリも量的に水管を再生させることが初めて証明されたが、その再生力は水管の長い二枚貝に比べて低いことが明らかとなった。
著者
澤田 昭三 中村 典 田中 公夫 李 俊益 美甘 和哉 佐藤 幸男
出版者
広島大学
雑誌
核融合特別研究
巻号頁・発行日
1988

ヒトのリンパ球は末梢血中では分裂しないので放射線の線量率依存性を調べるのには最適である。そこで細胞死を指標としてトリチウム水とガンマ線を同じ線量率、2Gy/hrと2Gy/day、つまり線量率を24分の11に下げた時の細胞生存率を調べたが、トリチウム水でもガンマ線と同程度の細胞生存率の上昇がみられた(中村)。同じくヒトのリンパ球染色体に及ぼすトリチウム水の影響を調べ、ガンマ線に対するRBEを求めた。今回は特に観察誤差の少ない=動原体染色体のみを指標として10〜50cGyの低線量域のRBEを正確に求め2.6(含水率70%)を得た(田中)。ヒト精子染色体に及ぼすトリチウム水の影響について前年度に引きつづいて調べた。線量も25〜17.3cGyの低線量域に主力をおき、2年間で合計3132精子の染色体分析を行った。染色体異常頻度は線量の増加とともに193cGyまでは直線的に増加したが、それ以上の線量では飽和に近ずき、直線にのらなくなった。これらの結果と今までに得ているX線のデータと比較してRBEを求めた。出現する種々の染色体異常を指標としたRBEは吸収線量を最低に見積った時は1.9〜3.0、最大の場合は1.04〜1.65となった(美甘)。マウス胎仔脳の発育に対するトリウチム水の影響を調べるための予備実験がガンマ線を使ってつづけられているが、脳細胞の致死を指標とする場合は、トリチウム水のような低線量率被爆の影響を正確に把握することは困難なことがわかった(佐藤)。マウスの妊性低下に及ぼすトリチウムの影響を調べたが、線量・効果が明確でないこと及びデータにばらつきがあって今後の研究が必要と思われた(李)。有機結合型トリチウムのマウス初期胚に与える影響を調べ、吸収線量を基礎としたLD_<50>は核酸結合型で約1/20、アミノ酸結合型では1/5ほどトリチウム水に比べて低かった(山田)。体内トリチウム水の排泄促進剤として二種類の利尿剤の併用効果をねらったが十分な結果はえられなかった(澤田)。
著者
喜多村 和之
出版者
広島大学
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.21-39, 1979-06
著者
植松 一眞 細谷 和海 吉田 将之 海野 徹也 立原 一憲 西田 睦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

オランダ国ライデン自然史博物館に保管されているシーボルトが採集した日本産フナのタイプ標本を現地で精査した結果、C. cuvieriはゲンゴロウブナに,C. langsdorfiiはギンブナに,C. grandculisはニゴロブナによく一致したが、キンブナに対応するタイプ標本はなかった。一方、C. buergeriのタイプシリーズにはオオキンブナとナガブナが混入している可能性が示唆された。日本各地および韓国群山市で採集したフナ59個体と7品種のキンギョを入手し、筋肉断片から抽出したミトコンドリアDNA(mtDNA)ND4/ND5領域の約3400塩基配列に基づく近隣結合法による系統樹作成、外部形態・計数形質・内部形態の計28項目の計測比較、倍数性の確認を行なった。その結果、これらは1.琵琶湖起源のゲンゴロウブナからなる集団、2.韓国・南西諸島のフナとキンギョからなる集団、3.日本主要集団からなることが遺伝学的にも形態学的にも確認された。日本産と韓国産の2倍体フナは異なる久ラスダーを形成したことから、両者には異なる学名を与えるべきと考えた。日本主要集団の2倍体個体はさらに東北亜集団(キンブナ)、中部亜集団(ナガブナとニゴロブナ)、そして南日本集団(オオキンブナ)に分けられるので、これらに与えるべき学名を新たに提案した。また、ゲンゴロウブナ集団はすべて2倍体であったが、他の2集団は、遺伝的に非常に近い2倍体と3倍体からなる集団であった。すなわち、2倍体と3倍体は各地域集団において相互に生殖交流しつつ分化したものと考えられた。キンギョは遺伝的に日本主要集団のフナとは明らかに異なり、韓国・南西諸島の集団に属するので、大陸のフナがその起源であることがあらためて確認された。フナとキンギョの行動特性(情動反応性)が明らかに異なることを示すとともに、その原因となる脳内発現遺伝子の候補を得た。
著者
田代 聡 堀越 保則
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

放射線誘発核内ドメインRAD51フォーカスについては、核膜裏打ち構造タンパク質の一つであるLaminBがRAD51の分解を抑制することでRAD51フォーカス形成を促進することなどを見出し、論文発表した。新しい生物学的線量評価法についての研究としては、放射線治療症例についてのFISH法などを用いた放射線被ばく影響の20年にわたる追跡調査の結果や心臓CTによるリンパ球DNA損傷のgammaH2AX免疫染色を用いた放射線影響評価などを報告した。超解像顕微鏡を用いた放射線誘発核内ドメインの動的構造解析では、放射線照射によりRAD51フォーカスの形が変わることなどを明らかにし、現在論文投稿中である。
著者
宮澤 啓輔
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

瀬戸内海産下等底生動物におけるフグ毒(tetrodotoxin、TTXと略記)の分布起源、蓄積機構を解明する目的で、実験を行ない、以下の諸結果を得た。すでに他地域と同様、TTXの保有を確認した棘皮動物トゲモミジガイ(Astropecten polyacanthus)の毒性調査の結果、季節変動では生殖期に高毒性を示すこと、体内分布では卵巣の毒性が著しく高い(最高12700MU^^ー/g)こと等を認めた。また筆者らがすでにTTXによる毒化を確認している扁形動物オオツノヒラムシ(Planocera multitentaculata)では、成熟卵を含む輸卵管の毒性が高く、消化管がこれに次ぐことを認めた。さらにオオツノヒラムシの産出卵の毒性は極めて高く、最高10700MU^^ー/gに達し、親のwhole bodyの毒性の数10倍を示した。またトゲモミジガイでは卵巣の毒性が高いため、whole bodyの平均毒性で、雌は雄の約2.5倍を示した。このように卵巣あるいは卵の毒性が高いことは、フグやカリフォルニアイモリと同様、TTXが生体防御物質として存在する可能性を示唆した。次にオオツノヒラムシ消化管から、かなり強力なTTX産生能をもつ細菌、Vibrio sp.を分離し、これがヒラムシのTTXの起源である可能性を示した。また扁形動物と近縁の紐形物動のミドリヒモムシ(Lineus fusroviridis)、クリゲヒモムシ(Tubulanus punctatus)等ヒモムシ類にTTXとその関連物質の存在を初めて確認し、TTXの分布を紐形動物に拡大した。またヒモムシ類の部位別TTX含量を調べた結果、吻が最も高濃度であることを認めた。吻に高濃度のTTXを持つことは、TTXを餌動物の捕獲、敵からの防御の手段として使っている可能性がある。この外、環形動物のウロコムシ(Lepidonotus sp.)や腔腸動物のイソギンチャク(Actirua sp.)等にも初めてTTXを検出した。
著者
富永 一登 川合 康三 釜谷 武志 浅見 洋二 和田 英信 緑川 英樹
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

『文選』の伝承から見た文学言語の型の形成と継承を追究するための基礎作業として、まず『文選』詩編(12巻分)の訳注作業を完成した。原稿作成は25年度内に完了したので、近々にこれを出版社から刊行し、広く社会に公表する予定である。また、『文選』所収の主な詩人の経歴や作品についてのコメントをまとめた。これも刊行予定の訳書に付載する。更に近年の『文選』研究の整理や唐代宋代の詩人への『文選』の影響についても、学術雑誌などに掲載し、著書としても刊行した。また、台湾大学の柯慶明・蔡瑜の両教授を招聘して『文選』の文学言語の継承に与えた影響について討論を行い、研究成果の国際的交流を行った。
著者
今村 展隆 小熊 信夫
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

我々は、ウクライナのすべての州から診断依頼を受けた過去6年間(1995〜2001年)に、5,483名の患者(成人2,199名、子供3,284名)を調査した。中でもチェルノブイリ原子力発電所の事故当時、7.5〜25cGyの放射能を浴びたチェルノブイリ除染作業者のうち、144名に血液学的疾患が認められた。我々はまた、モノクローナル抗体を用いた,形態、細胞化学,免疫細胞化学および免疫型質解析によって、90名の患者に血液学的悪性疾患を認めた。その内訳は、急性リンパ性白血病4名、B細胞型の慢性リンパ性白血病(B-CLL)16名、B細胞性リンパ腫2名、多発性骨髄腫12名、その他の非ホジキン悪性リンパ腫7名、Sezary症候群2名、願粒リンパ球性白血病6名、急性骨髄性白血病15名、慢性骨髄性白血病8名、真性赤血球増加症1名、本態性血小板血症3名、および骨髄異形成症候群9名であった。血液学的悪性腫瘍患者の平均年齢は57.1±1.3歳で、男女別では男性のほうが多かった(84名;93.3%)。悪性でない血液疾患が8名(再生不良性貧血、溶血性貧血、突発性血小板減少性紫斑病)に、また、骨髄の転移性癌が5名に認められた。造血機構の持続的障害(リンパ球増加症、好中球増加症、造血細胞の異形成変化)は、26名の患者で検出された。この患者グループについては、根本的な病因の性質を明らかにするため、最新の分子遺伝子解析法を用いてさらに詳しく調査する必要がある。6名の除染作業者については、明白な血液学的障害は認められなかった。血液学的悪性腫瘍の発生率は、血液以外の悪性腫瘍発生率および被爆しなかった患者の悪性腫瘍発生率と比較して高率である。我々の研究室で調査したチェルノブイリ除染作業者の集団では、造血組織およびリンパ系組織の主要な悪性疾患の形態をすべて登録し、その中では、慢性リンパ性白血病(19%)を含む慢性リンパ増殖性疾患が優位に多かった(57.4%)。慢性リンパ性白血病は、最近になるまで放射線に関連する白血病であるとは認識されていなかったため、この事実は特に重要である。こうした見解は原爆被爆者生存者の白血病発生率に関するデータに完全に基づいたものであった。一方、日本では古典的なB-CLLは珍しい形態の白血病であり、全白血病の5%に満たない。米国およびヨーロッパでは、B-CLLは成人で最も優勢な白血病形態のひとつである。除染作業者のうち16名のB-CLL患者に関する我々のデータと、Research Center of Radiation Medicineの血液診断所でB-CLL患者36名を観察したKlimenko教授のデータは、電離放射線への曝露はB-CLLのリスクを増加させないという一般に受け入れられた見解に疑問を投げているように考える。こうした一般的見解が優勢になると、除染作業者やウクライナおよびベラルーシの汚染地域に住む住民の間で、B-CLLの発生率が増加していることに関する疫学的データを無視する決定的要因になりかねないと考える。
著者
城田 愛
出版者
広島大学
雑誌
Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (ISSN:13408364)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.145-148, 2001

第1章高齢者のライフスタイルと睡眠問題に関する現状 現在,世界の高齢化は急速に進んでいる。1995年に全世界の総人口に占める65歳以上の人口の割合は6.6%に過ぎなかったが,2025年には10%を超えることが予想されている(国立社会保障・人口問題研究所, 1997)。さらに2010年以降わが国の高齢化率は,世界の中でも最も高くなるといわれている(厚生省, 2000)。このような世界の高齢化に伴って世界保健機構(WHO)は,1999年に"活力ある高齢化(アクティブ・エイジング)"の概念を提唱し,高齢者が社会でその役割を果たし続けることの重要性を提唱した(World Health Organization, 1999)。一口に高齢者といっても,その実態は様々である。ライフスタイルは,喫煙や肥満などの生活習慣病を予防する目的で注目されはじめたが,現在では個人の生き方,生活様式に加えて,生活態度や個人の価値意識を含む包括的な概念と定義されている。活力ある高齢化を達成する上で,高齢者のライフスタイルを考慮することは重要である。一方,高齢者は心身に多くの問題を抱えており,睡眠に関する愁訴も加齢に伴って増加している(Dement et al., 1982)。高齢者に多く認められる睡眠の特徴として,中途覚醒や早朝覚醒の増加,夜中に目が覚めた後なかなか寝つくことができない再入眠困難,睡眠段階3と4を含む深睡眠の減少,日中の仮眠や居眠りの増加があげられる(林他, 1981)。また睡眠-覚醒リズム(サーカディアンリズム;circadian rhythm)の位相が加齢に伴って前進する(Carskadon et al., 1982)。これらの睡眠の変化は,多くの高齢者を悩ましており,心身の不調を引き起こし,日中の活動を低下させ,生活の質(Quality of life; QOL)を低下させる深刻な問題ととらえられている。このような理由から,活力ある高齢化を考える上で,睡眠問題への対処は不可欠である。本研究では,高齢者の睡眠問題にライフスタイルの個人差という観点からアプローチをおこなった。ライフスタイルはその概念枠組みが大きいため,ライフスタイルを直接測定して得点化することは難しい。高齢者の心理的な状態(well-being)を測定する方法として,社会的自信度(谷口他, 1982)とPGCモラール・スケール(Philadelphia Geriatric Center morale scale; Lawton, 1975)がある。社会的自信度が高いということは「前向きで高い達成意欲を持っている」ことを示している(谷口他, 1982)。一方,PGCモラール・スケールの得点が高いことは「自分自身についての基本的な満足感をもっていること(人生の受容)」,「環境のなかに自分の居場所があるという感じをもっていること(心理的満足度)」,「動かしえないような事実についてはそれを受容できていること(精神的不安)」という3つの意味が含まれている(古谷野, 1996)。したがって,社会的自信度とPGCモラール・スケールの得点が高いということは,前向きな姿勢で達成意欲が高く,周囲の環境に適応していると推測できる。本研究では,これらの質問紙得点が高い高齢者を「高意欲者」と定義した。高意欲者は環境への適応性が高く,日中覚醒しているときの生活内容が充実していると考えられる。そのような高意欲高齢者と低意欲高齢者を比較することで,ライフスタイル(意欲レベル)が睡眠問題に及ぼす影響について検討した。第2章身体活動量からみた活動-休止リズムの検討 本章では65歳以上の高齢者を対象として,意欲レベルと活動リズムの関連性を検討した。ライフスタイル質問紙の得点で抽出した高意欲群14名と低意欲群14名を対象にアクティグラフを用いて,連続10日間の身体活動量を測定した。睡眠健康調査の結果,高意欲高齢者は,低意欲群よりも起床時の眠気や疲労,入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒の報告が少なかつた。さらに仮眠も含めた睡眠中の活動量が低意欲群よりも高意欲群で少なかった。また,夜間睡眠については低意欲群の入眠潜時が長いことから,低意欲群の高齢者は,眠たいという感覚があっても活動性が下がりきるまで寝付くことができないことが考えられた。連続測定した活動量について周期分析を行つた結果,ほぼ全員にτ=24hrとτ=12hrの成分が検出された。同定された成分の振幅に群間差は認められなかったが,両成分とも低意欲群の位相が高意欲群よりも前進していることが明らかになった。そこで自己報告による夜間睡眠と日中の仮眠の時間帯を活動リズムにあてはめて検討したところ,夜間睡眠については,低意欲群の睡眠時間帯は活動リズムと同じく高意欲群より前進していた。しかし,日中の仮眠については,仮眠をとる時間帯に群間差はなかった。この結果は,高意欲群では活動性が下降する時期に仮眠を開始していたのに対し,低意欲群では活動性が上昇に向かう時期でも仮眠を長くとっていることを示している。
著者
星 正治 坂口 綾 山本 政儀 原田 浩徳 大瀧 慈 佐藤 健一 川野 徳幸 豊田 新 藤本 成明 井上 顕 野宗 義博 原田 結花 高辻 俊宏 七條 和子 遠藤 暁 佐藤 斉 大谷 敬子 片山 博昭 チャイジュヌソバ ナイラ ステパネンコ ヴァレリー シンカレフ セルゲイ ズマジーロフ カシム 武市 宣雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

放射線による発がんなどのリスクは、ほぼ広島・長崎の被ばく者の調査により評価されてきた。その結果は国際放射線防護委員会(ICRP)での議論を経て、国内法である放射線障害防止法に取り入れられている。しかし原爆は一瞬の被ばくであるが、セミパラチンスクでは長時間かつ微粒子による被ばくである。従ってそのリスクは異なっている可能性がある。本研究は共同研究による被曝線量とリスク評価である。測定や調査は、1.土壌中のセシウムやプルトニウム、2.煉瓦、歯、染色体異常による被曝線量、3.聞き取り調査による心理的影響、4.データベースの整備とリスク、5.微粒子効果の動物実験などであり、被爆の実態を解明した。
著者
中山 寿子
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

小脳登上線維シナプス刈り込みへミクログリアが関与するか、関与するならばどのような機序であるかを明らかにする研究を行った。ミクログリアを枯渇させる薬剤または活性化を抑制する薬剤を小脳皮質に投与したマウスや、脳内のミクログリアが減少した遺伝子改変マウスを用いた実験から、登上線維が正常に1本化するためには生後2週目にミクログリアが存在することが必要であることを明らかにした。作用機序に関して、ミクログリアが不要な登上線維を貪食していないことを示唆する結果を得たほか、一本化に重要であることが既に報告されているシナプスの機能に作用することによって登上線維シナプスの発達を制御することを示唆する結果を得た。