著者
楠戸 一彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の課題は,ドイツ中世後期の剣士団体である「マルクス兄弟団」の成立事情,目的と活動,団員の剣術技法,団員の社会的階層を,解明することであった。先行研究の成果を整理し,史料である剣術書と「マルクス兄弟団」関係文書の内容を分析することによって,次の点を明らかにした。(1)マルクス兄弟団は1487年に皇帝フリードリヒ3世より「特権状」を獲得した。(2)目的と活動の重点は,当初の宗教的相互扶助から,16世紀後半にはツンフト的権利擁護に移行した。(3)団員の剣術技法は,14世紀後半のJ.リーヒテナウエルの技法を遵守していた。(4)団員の社会的階層は,貴族や商人ではなく,大部分が手工業者であった。
著者
木村 昭郎 田中 英夫 早川 式彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

原爆被爆者の高令化に伴い、骨髄異形成症候群(MDS)の増加がみられているが、当血液内科において過去15年間に診断されたMDSの病型診断を確定し、個人線量は当研究所の開発したABS93Dを用いてCox比例ハザードモデルにより統計学的解析を行った。その結果、個人被爆線量が得られたMDS例は26例であり、被曝線量反応関係を明らかにした。すなわち1 Sv被爆の0 Sv被爆に対する相対リスクは2.4であり、被曝線量反応関係に影響する因子として、被爆時年令を明らかにした。被爆者MDSの遺伝子レベルでの異常を明らかにするため、分化型急性骨髄性白血病の原因遺伝子として同定され、二次性白血病にも関与している可能性が指摘されている転写因子AML1遺伝子に注目し検索をすすめた。AML1遺伝子内のラントドメインの変異をPCR-SSCP及び塩基配列決定により検索したところ、非被爆者MDSでは74症例中2例(2.7%)に変異が認められ、これまでの報告と同程度の頻度であった。しかし、原爆被爆者で低線量被曝を受けたと推測されるMDSにおいては、13症例中6例(46%)と高頻度に点突然変異が認められた(ミスセンス3例、ノンセンス1例、サイレンス2例)。これらの点突然変異体について二量体形成能、DNA結合能、転写活性能についての解析を実施した。これらの結果より放射線関連MDS/AMLにおいてAML1の点突然変異が関与していることが明らかになった。次にMDSの病態には遺伝的不安定性が関与していると考えられるが、患者の単核球について、4種類のDNA修復酵素の遺伝子(ERCC 1,ERCC 3,ERCC 5,XPC)発現を検討したところ、低下〜消失した症例を高頻度に認め、MDSの病態に関与することが示唆された。
著者
入戸野 宏 小森 政嗣 金井 嘉宏 井原 なみは
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

“かわいい(kawaii)”は日常生活でよく使われる言葉であり,日本のポップカルチャーの代表ともいわれる。本研究では,“かわいい”を対象の属性ではなく,対象に接することで生じる感情であると捉え,その性質と機能について質問紙調査と実験室実験を用いて検討した。その結果,“かわいい”は,好ましい人やモノを“見まもりたい”“一緒にいたい”という接近動機づけに関連した社会的なポジティブ感情であり,主観・生理・行動の3側面に影響を与えることが明らかになった。
著者
戸梶 亜紀彦
出版者
広島大学
雑誌
広島大学マネジメント研究 (ISSN:13464086)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.27-37, 2004-03-19
被引用文献数
3

人間は, さまざまな経験をとおして成長・発達していく。そして, 個々の体験から, 何らかの影響を受け続ける。特に, 強烈な情動を伴った出来事の影響は強いと考えられる。そこで本研究は, 「自分の何かを変えた感動的な出来事」について調査を行い, 感動の効果に関するメカニズムについて詳細な検討を行った。その結果, 感動には大きく分けて, 動機づけに関連した効果, 認知的枠組みの更新に関連した効果, 他者志向・対人受容に関連した効果という3つの効果のあることが示された。また, 感動体験は, 単に個人の何かを変化させる契機となるだけではなく, 出来事に対する総合的な評価を背景とした外的事実の成立の瞬間と, 心身の感覚および認知的作用の相乗効果とが重奏的に作用して, 個人の何かを変化させた出来事をより印象的な事象として記憶の貯蔵庫に精緻化して各効果を増強し, 持続させる役割を果たし, さらに, 個々人の問題意識に関連するような潜在的および顕在的目標行動を始発させる契機となっているという可能性が示唆された。これらの結果に基づいて, 感動的体験の応用可能性について論じられる。
著者
ポスト デイヴィッド スタンバック エイミー ギンズバーグ マーク ハナム エミリー ビーナヴォット アーロン ビョー クリス 福留 東土[監訳] 三代川 典史[翻訳]
出版者
広島大学
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.319-335, 2013-03

英語の"Rank"には二つの意味がある。Shakespeare が『ハムレット』を著して以来,この単語はその第1幕にある,順番を付けられ階級化された序列体系を意味するとともに,第3幕で使われる,「腐敗した」「穢れた」という意味を持つ1)。今日,世界中の大学のテニュア(終身在職権)審査委員会や図書収集担当司書にとって,第1幕での序列体系を示す"Rank"はお馴染みである。だが,第3幕で使われる"Rank"の概念も理解しうるだろう。"Rank"の持つ二つの意味が関連性を保持しているのは,「インパクトファクター(論文の影響力を示す指標)」を学問評価の最適な手法と考え,その普及を促進するトムソン・ロイターのような商業ビジネスのおかげだともいえる。 本稿では,学術出版,大学,研究者の評価にインパクトファクターやランキングが利用されるのは,次の4つの動向に関連していることを論ずる。①官僚主義的権威の特徴である専門知識の(不可逆的な?)正統化,②高等教育の規制と管理を巡る駆引き(新管理主義と研究評価制度に如実に顕れる)③この2つの動向に便乗して商業的学術出版界が行う価格設定や資金調達。この動向は大学図書館の予算を侵食する高額課金に顕れる。④学術誌や編集者に期待されるドラマ的演出の拡大。これは,学術誌や編集者が履歴書製造工場の生産ラインの従業員ではなく,思想を賑やかに楽しく語り合う場のホスト役を自認する場合にもあてはまる動向だ。本稿はこれら4つの動向に言及した後, その動向の中に筆者が編集者の立場で携わる『比較教育学研究(Comparative EducationReview)』(以下『CER』)を位置づける。そして,学術誌が選択し得るオプションを考察する。著作者の履歴書に加えられることを目的とする論文ばかりの学術誌もあるが,それとは異なる,より活気に溢れ関わり合いを深く持つように教育学研究のコミュニティを発展させる方法を提案したい。その上で,インパクトファクターという指標の代替手段,或いはその補完に活用しうる,学術誌のクオリティ(以下「質」)を判断する手段を提案する。学術論文は学術コミュニケーションの副次的成果に過ぎないのだ。我々の主張は,最も根本的な成果としての学術コミュニケーションそのものに,学術誌とその読者が固有の価値を見出し,このコミュニケーションに関与すべきである,ということだ。In English the word "Rank" has a double meaning: a "hierarchical series" and also "rotten" or "filthy." This essay considers the pressure felt by scholars publish in journals that are highly "ranked." We first document evidence for this pressure, then discuss the consequences of impact factors and ranking in higher education. We connect ranking four movements: 1) the rationalization of expertise as a feature of Weberian bureaucratic authority; 2) the politics of higher education regulation and control, as manifest in the new managerialism and associated research assessment exercises; 3) the pricing and finance of commercial scholarly publishing, which takes advantage of the preceding developments by charging high prices to maximize profits; 4) decisions by editors and their journals to play by the new rules even when they are personally opposed to them and when they value journals for a different purpose. After touching on these four movements, we discuss the journal that we edit (Comparative Education Review). We consider the alternatives to ranking, and we suggest ways to promote a more vital and engaged educational research. Specifically, we suggest a means to judge the quality of scholarly journals that could be used as an alternative, or supplement, to the metric of the impact factor alone, by considering articles as the by-products of scholarly communication. We advocate that journals and readers attend to the intrinsic value of that communication as the most fundamental product.
著者
渡部 芳栄
出版者
広島大学
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.153-168, 2015-03

Public University Corporations (PUCs) are founded by local governments to provide higher education, research, and social services efficiently and effectively. The number of PUCs in Japan has been increased since 2004 when the PUC system was begun, and now there are 65 PUCs in 2014. This article examines a total of ninety eight Mid-Term Plans of PUCs to investigate how local governments calculate Management Expenses Grants (MEG) and how much they intend to actually allocate the grants to PUCs. Comparing ninety eight Mid-Term Plans reveals the difference in the proportion of MEG to revenue by the year when they were incorporated. PUCs incorporated between 2005 and 2006 experience relatively deep cuts of MEG nevertheless the average proportion of MEG in the first Mid-Term Goal period. On the other hand, PUCs incorporated between 2008 and 2010 have a relatively high proportion of MEG in the first Mid-Term Goal period. Whether their founders reduce, maintain or increase MEG in the future should be investigated. Also one finds that one third of corporations adopt a variety of coefficients in the calculation of MEG. The various coefficients have various influences on PUC: coefficient of parts of expense items may have less influence and that of MEG itself probably have more influence. Local governments and PUCs should realize and consider the influence and significance of coefficients.本研究はJSPS科研費 25870082(「教育の質保証時代における公立大学法人運営の研究」(研究代表者 渡部芳栄)), 25285236(「大学経営の基盤となる財務情報の戦略的活用に関する研究」(研究代表者 水田健輔))の助成を受けたものである。
著者
市川 浩 梶 雅範 小林 俊哉 小林 俊哉
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「科学アカデミー」の実践機関としての,現代にいたるまでの存続は,ロシア・ソヴィエト科学発展のもっとも特徴的な枠組みのひとつとなっている.本研究において,われわれは科学アカデミーを存続させた歴史的諸要因の解明につとめた.最近,さまざまな文書館で公開された,かつての機密資料の研究のおかげで,科学史の分野においても,伝統的なロシア/ソヴィエト社会にたいする伝統的な全体主義モデルはより多元主義的な見方に取って代わられつつある.3年間の活発な研究活動を通じてえられた研究成果は,さまざまな歴史的瞬間において権力に対抗してしめされた科学者のイニシァティヴや主体性を確認するものとなり,結果として,上述した,われわれが現在目撃しているロシア/ソヴィエト科学史研究における重要な変化を補強するものとなっている.
著者
星 正治 坂口 綾 山本 政儀 原田 浩徳 大瀧 慈 佐藤 健一 川野 徳幸 豊田 新 藤本 成明 井上 顕 野宗 義博 原田 結花 高辻 俊宏 七條 和子 遠藤 暁 佐藤 斉 大谷 敬子 片山 博昭 チャイジュヌソバ ナイラ ステパネンコ ヴァレリー シンカレフ セルゲイ ズマジーロフ カシム 武市 宣雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

放射線による発がんなどのリスクは、ほぼ広島・長崎の被ばく者の調査により評価されてきた。その結果は国際放射線防護委員会(ICRP)での議論を経て、国内法である放射線障害防止法に取り入れられている。しかし原爆は一瞬の被ばくであるが、セミパラチンスクでは長時間かつ微粒子による被ばくである。従ってそのリスクは異なっている可能性がある。本研究は共同研究による被曝線量とリスク評価である。測定や調査は、1.土壌中のセシウムやプルトニウム、2.煉瓦、歯、染色体異常による被曝線量、3.聞き取り調査による心理的影響、4.データベースの整備とリスク、5.微粒子効果の動物実験などであり、被爆の実態を解明した。
著者
竹野 幸夫
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

一酸化窒素(NO)は、ヒトの気道において重要な生理機能や炎症制御に深く関与している。またヒト鼻副鼻腔は生理的に重要なNO産生の場であり、鼻アレルギーや副鼻腔炎などの疾患において病態診断のパラメータとしての有用性が期待されている。今回の研究において我々は、誘導型NOS (iNOS)とその発現制御に深く関わっている転写因子であるNF-κBに関して、iNOSにより産生されたNOが、病態の遷延化と副鼻腔の生理機能の維持にどのように関与しているかの解析と、副鼻腔粘膜における転写因子の活性化と局所サイトカインネットワークとの関連性との検討を行った。そして、 1)iNOS発現細胞の同定と疾患による変動、炎症性サイトカインの影響:ヒト鼻腔粘膜擦過細胞を用い、NOS isoformの発現を蛍光免疫染色、RT-PCR法にて解析した。さらにNO産生の状態を、NO蛍光測定試薬であるDAF-2 DAを用いリアルタイム下に観察した。そして、鼻アレルギーにおいて上皮細胞のiNOSの発現亢進がその重症度に応じて認められること、炎症性サイトカイン(TNF-α、IFN-γ)による発現誘導を確認した。2)副鼻腔粘膜におけるNF-κBの発現と活性化を、RT-PCR法および蛍光二重染色にて解析し、活性部位の局在を同定した。さらにNF-KB活性化率とIL-8、IL-16、eotaxin mRNA発現との間で有意な相関が認められ、組織における好酸球浸潤機構に果たす本転写因子の役割が判明した。3)副鼻腔粘膜培養細胞を用いたNF-κB活性化実験と外用ステロイドの抑制効果:培養上皮細胞に対するTNF-α刺激により著明なNF-κBの活性化率の増強が観察された。さらにfluticasone propionateは濃度依存的にその活性化を抑制し、臨床的に難治性の副鼻腔炎への臨床効果が期待された。
著者
冨山 毅 重田 利拓
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

二枚貝の水管はカレイ類の稚魚にとって再生可能な食物として利用されることから、カレイ類による水管の利用実態および二枚貝水管の再生力を評価した。広島湾周辺の干潟域においては二枚貝の分布密度が低く、水管はわずかに利用されるだけであったが、仙台湾周辺の干潟域では高い割合で利用されていた。また、水管の短いアサリも量的に水管を再生させることが初めて証明されたが、その再生力は水管の長い二枚貝に比べて低いことが明らかとなった。
著者
澤田 昭三 中村 典 田中 公夫 李 俊益 美甘 和哉 佐藤 幸男
出版者
広島大学
雑誌
核融合特別研究
巻号頁・発行日
1988

ヒトのリンパ球は末梢血中では分裂しないので放射線の線量率依存性を調べるのには最適である。そこで細胞死を指標としてトリチウム水とガンマ線を同じ線量率、2Gy/hrと2Gy/day、つまり線量率を24分の11に下げた時の細胞生存率を調べたが、トリチウム水でもガンマ線と同程度の細胞生存率の上昇がみられた(中村)。同じくヒトのリンパ球染色体に及ぼすトリチウム水の影響を調べ、ガンマ線に対するRBEを求めた。今回は特に観察誤差の少ない=動原体染色体のみを指標として10〜50cGyの低線量域のRBEを正確に求め2.6(含水率70%)を得た(田中)。ヒト精子染色体に及ぼすトリチウム水の影響について前年度に引きつづいて調べた。線量も25〜17.3cGyの低線量域に主力をおき、2年間で合計3132精子の染色体分析を行った。染色体異常頻度は線量の増加とともに193cGyまでは直線的に増加したが、それ以上の線量では飽和に近ずき、直線にのらなくなった。これらの結果と今までに得ているX線のデータと比較してRBEを求めた。出現する種々の染色体異常を指標としたRBEは吸収線量を最低に見積った時は1.9〜3.0、最大の場合は1.04〜1.65となった(美甘)。マウス胎仔脳の発育に対するトリウチム水の影響を調べるための予備実験がガンマ線を使ってつづけられているが、脳細胞の致死を指標とする場合は、トリチウム水のような低線量率被爆の影響を正確に把握することは困難なことがわかった(佐藤)。マウスの妊性低下に及ぼすトリチウムの影響を調べたが、線量・効果が明確でないこと及びデータにばらつきがあって今後の研究が必要と思われた(李)。有機結合型トリチウムのマウス初期胚に与える影響を調べ、吸収線量を基礎としたLD_<50>は核酸結合型で約1/20、アミノ酸結合型では1/5ほどトリチウム水に比べて低かった(山田)。体内トリチウム水の排泄促進剤として二種類の利尿剤の併用効果をねらったが十分な結果はえられなかった(澤田)。
著者
宮澤 啓輔
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

瀬戸内海産下等底生動物におけるフグ毒(tetrodotoxin、TTXと略記)の分布起源、蓄積機構を解明する目的で、実験を行ない、以下の諸結果を得た。すでに他地域と同様、TTXの保有を確認した棘皮動物トゲモミジガイ(Astropecten polyacanthus)の毒性調査の結果、季節変動では生殖期に高毒性を示すこと、体内分布では卵巣の毒性が著しく高い(最高12700MU^^ー/g)こと等を認めた。また筆者らがすでにTTXによる毒化を確認している扁形動物オオツノヒラムシ(Planocera multitentaculata)では、成熟卵を含む輸卵管の毒性が高く、消化管がこれに次ぐことを認めた。さらにオオツノヒラムシの産出卵の毒性は極めて高く、最高10700MU^^ー/gに達し、親のwhole bodyの毒性の数10倍を示した。またトゲモミジガイでは卵巣の毒性が高いため、whole bodyの平均毒性で、雌は雄の約2.5倍を示した。このように卵巣あるいは卵の毒性が高いことは、フグやカリフォルニアイモリと同様、TTXが生体防御物質として存在する可能性を示唆した。次にオオツノヒラムシ消化管から、かなり強力なTTX産生能をもつ細菌、Vibrio sp.を分離し、これがヒラムシのTTXの起源である可能性を示した。また扁形動物と近縁の紐形物動のミドリヒモムシ(Lineus fusroviridis)、クリゲヒモムシ(Tubulanus punctatus)等ヒモムシ類にTTXとその関連物質の存在を初めて確認し、TTXの分布を紐形動物に拡大した。またヒモムシ類の部位別TTX含量を調べた結果、吻が最も高濃度であることを認めた。吻に高濃度のTTXを持つことは、TTXを餌動物の捕獲、敵からの防御の手段として使っている可能性がある。この外、環形動物のウロコムシ(Lepidonotus sp.)や腔腸動物のイソギンチャク(Actirua sp.)等にも初めてTTXを検出した。
著者
喜多村 和之
出版者
広島大学
雑誌
大学論集 (ISSN:03020142)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.21-39, 1979-06
著者
植松 一眞 細谷 和海 吉田 将之 海野 徹也 立原 一憲 西田 睦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

オランダ国ライデン自然史博物館に保管されているシーボルトが採集した日本産フナのタイプ標本を現地で精査した結果、C. cuvieriはゲンゴロウブナに,C. langsdorfiiはギンブナに,C. grandculisはニゴロブナによく一致したが、キンブナに対応するタイプ標本はなかった。一方、C. buergeriのタイプシリーズにはオオキンブナとナガブナが混入している可能性が示唆された。日本各地および韓国群山市で採集したフナ59個体と7品種のキンギョを入手し、筋肉断片から抽出したミトコンドリアDNA(mtDNA)ND4/ND5領域の約3400塩基配列に基づく近隣結合法による系統樹作成、外部形態・計数形質・内部形態の計28項目の計測比較、倍数性の確認を行なった。その結果、これらは1.琵琶湖起源のゲンゴロウブナからなる集団、2.韓国・南西諸島のフナとキンギョからなる集団、3.日本主要集団からなることが遺伝学的にも形態学的にも確認された。日本産と韓国産の2倍体フナは異なる久ラスダーを形成したことから、両者には異なる学名を与えるべきと考えた。日本主要集団の2倍体個体はさらに東北亜集団(キンブナ)、中部亜集団(ナガブナとニゴロブナ)、そして南日本集団(オオキンブナ)に分けられるので、これらに与えるべき学名を新たに提案した。また、ゲンゴロウブナ集団はすべて2倍体であったが、他の2集団は、遺伝的に非常に近い2倍体と3倍体からなる集団であった。すなわち、2倍体と3倍体は各地域集団において相互に生殖交流しつつ分化したものと考えられた。キンギョは遺伝的に日本主要集団のフナとは明らかに異なり、韓国・南西諸島の集団に属するので、大陸のフナがその起源であることがあらためて確認された。フナとキンギョの行動特性(情動反応性)が明らかに異なることを示すとともに、その原因となる脳内発現遺伝子の候補を得た。
著者
田代 聡 堀越 保則
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

放射線誘発核内ドメインRAD51フォーカスについては、核膜裏打ち構造タンパク質の一つであるLaminBがRAD51の分解を抑制することでRAD51フォーカス形成を促進することなどを見出し、論文発表した。新しい生物学的線量評価法についての研究としては、放射線治療症例についてのFISH法などを用いた放射線被ばく影響の20年にわたる追跡調査の結果や心臓CTによるリンパ球DNA損傷のgammaH2AX免疫染色を用いた放射線影響評価などを報告した。超解像顕微鏡を用いた放射線誘発核内ドメインの動的構造解析では、放射線照射によりRAD51フォーカスの形が変わることなどを明らかにし、現在論文投稿中である。
著者
倉林 敦 住田 正幸 広瀬 裕一 浮穴 和義 澤田 均 中澤 志織 逸見 敬太郎 ベンセス ミゲル マローン ジョン ミンター レスリー ド プリーツ ルイス
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

フクラガエルが生殖時に用いる糊の物理的特性と化学成分、および糊候補遺伝子の探索を行った。本研究の結果、フクラガエル糊の接着強度は、およそ500g/cm2であり、その主要構成要素は蛋白質であることが分かった。さらに、糊物質候補は、他のカエルで報告されていた皮膚分泌物と似た3種の蛋白質と、1種の新規蛋白質があることが示唆された。また、アメフクラガエルについて、人工繁殖を試みた。その結果、Amphiplexと呼ばれるゴナドトロピン誘導ホルモン作動薬とドーパ混合ホルモン剤が、本種の排卵を促すことを明らかにし、世界で初めて飼育下での人工的な交尾の促進と、営巣・産卵までの観察に成功した。