- 著者
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石田 寛
- 出版者
- 福山大学
- 雑誌
- 福山大学経済学論集 (ISSN:02884542)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.1, pp.1-48, 1992-07-15
日本では米ならびに稲作関係用語は豊富であるが、麦作ならびに牧畜用語は貧弱である。稲作は日本農業の根幹たるのみならず日本人の生活のバックボーンをなすものである。最近20年間、農業技術・耕作体系に大きな進歩があった。なにより大きな変革は1968年以来減産、減作に迫られ、米作中心の日本農業の仕組に批判が加えられつつある。そして、昔からの稲作関係用語、農耕儀礼も失われつつある。本論はヘラルド・ウーリッヒ教授の『米作の術語』を参照することによって、世界的展望の下に日本の稲作用語を検討し、米作文化に新しい光をあてようとするものである。本報告は三つの意義を持つ。第1は日本稲作用語を地理学の観点に立って、世界の農業システム・土地利用の立場から、確定・組織化したという点である。そして日本語術語に的確な英 (米) 語を提示し、さらに中国語を初めとしその他アジア諸言語をも関連的に付している。第2は本研究を地理学用語委員会で発表 (ドイツのギーゼン、1970) したのは20年以上昔のことであるが、それまでの重要術語を採り上げ、日本稲作文化の基本的なもの、歴史地理的なものは十分論ぜられている。本論を利用することによって四半世紀間の日本農業の激変を、より深くよりグローバルに考察することができる。第3は日本稲作・米作文化の日英二ヶ国語による専門用語 (論) 集としては最初のものと自負するものである。そして筆者の A Bilingual Cross-Cultural Lexicon for Area Studies (in prep.) (『地域研究のための二ヶ国語による通文化レキシコン』、刊行準備中) へと展開する。