1 0 0 0 OA せせらぎの書

著者
天野 雅郎
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-11, 1993-03-31

どだい,このような前口上など不均合いにして不似合いな,この「せせらぎの書」の一席が読者の皆様に,その名のとおりシェイクスピアの『お気に召すまま』の一節を借りうけて,お届けいたそうと願うのは古代日本人の呪術的宇宙である。それを『古事記』や『万葉集』等に物語られた,いわゆる神と魔,あるいはカミとモノとの一体となった世界,すなわちタマ(霊・魂)の世界の神話的伝承群と言い換えてもよい。ここでは類似のものは類似のものを産み出す(Similia Similibus)という黄金律につらぬかれ,すべてのものが一から他へと,その無限の相互反射をくりかえしている。さながら眼前の細流(せせらぎ)が時により,ある時は植物へと,ある時は動物へと,そしてある時は人や神すらへと,その姿を変幻自在にすりかえていくかのように。とどまるところをしらない融即と変身のスペクタクルの一端を,ご笑覧いただければ幸いである。

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