著者
奥 忍
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.123-127, 1996-08-24

本稿は日本の合唱教育の現状を、西洋音楽の影響という視点からグローバルにとらえようとするものである。日本民謡「斎太郎節」に焦点をあて、伝統的な日本民謡の様式と西洋様式による合唱のかけ声の音響的相異を明らかにするとともに、それらがいかに知覚・認知されるかという2側面から合唱における西洋音楽の影響を論じた。
著者
今井 敏博
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-8, 1994-08-20

小学校教員志望学生の,乗法の意味の拡張特に乗数が整数から有理数になることについての算数としての意味づけに関する調査を行い,その結果を分析した。乗数が小数の場合も累加の考えがあてはまると反応した被験者が3割近くもあり,予想を上回った。しかし,それらの被験者は,割合としての考えをもち備えており,累加の形で拡張できないかの模索の中での葛藤の状態にあると思われる。
著者
米澤 好史
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.159-169, 1994-08-20

本論では,認知心理学の学習観を紹介し,学習指導に認知心理学の知見をどう生かしていくかについて,次の6点から,その意義をまとめた。すなわち,結果ではなく過程を重視すること,方法としてではなく意味を重視すること,対人相互作用の中に位置づけられた学習として捉えること,教師に必要な知識とは何か,状況設定と適切な視点の必要性,メタ認知の効用である。こうした考察と具体的な指摘を通じて,学習者間の「やりとり」や学習者と教材との「かかわり」の大切さを指摘し,「立ち止まり」「気づく」営みとしての知的教育の必要性を指摘した。
著者
米澤 好史
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-20, 2000

これまで別々に議論されていた,こどもの日常的活動と学習活動を統合的に認知心理学の立場から捉える視点を提供し,それらに関わり援助するあり方を問う。まず,こどもたちの「切れる」という現象を分析する。こどものすべてを受け入れるという受容論,だめなものはだめと教え込むという強制論の2つの対立する極論の難点を指摘し,こどもと向き合うとはどうすることかを考察する。また,「反復練習させればよい」「できればうれしい」「体験すれば学習」などの誤った学習観を批判し,それを支えてきた評価観を批判する。それらの考察を通して,自立を援助し,生きる力を育てる学習環境の構築とそのあり方について提言する。そして,育児・教育の本質とは何かという観点から考察する。
著者
西山 由美子
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.133-143, 1994-03-31

中学生の文章表現能力の伸長を図るためのカギの一つは,「構成に対する評価力」を育てることにあるという論については,本紀要No.2に示した。今回の論考では,前回の論に基づき,平成5年4月に入学した生徒40名の生徒の作文自己評価力の変容を追うことにより,構威力を高めるための読書感想文指導のありかたを考察してみたい。研究の対象者である40名の生徒は,1学期の創作文の指導を通じて「起承転結」の構成に関する学習を経験している。今回の実践では,あらすじに終始する生徒が大半を占めた読書感想文(夏休みの課題として出題卜を取り上げ,構成力を高めるための手立てについて1試案を提示してみたい。具体的な方法としては,学習過程の中間段階で「構想発表会」を設定することにより,構成に対する効力感を高めることを試みた。そして,各々の生徒の作文の能力と自己評価力の両面から,構成力の高まりを考察する。
著者
倉盛 三知代 登尾 節子 池田 のり子
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.85-96, 1994-03-31

家庭科における環境教育の指導案・指導法の検討を目的とし,炊飯の学習に環境問題(生活排水)を導入した(A)・(B)2つの授業実践を試みた。(A)は学生による模擬授業(B)は小学校教諭による現場の授業である。次にそれらの実践について,4つの項目を立て,3つの観点から考察を行った。すなわち「授業記録」「授業展開の考察」「授業の成果」「授業の問題点」について,児童の興味・関心・実態との関連,指導の流れの適切性・道すじの論理性,授業の実践性の3観点から考察を進めた結果,指導案,指導法ともにほぼ成果を問えるものであった。(A)・(B)両実践の比較を通して言えることは,環境問題は複雑な内容をもつものなので,その教材化にあたっては,地域に即してより身近な題材をとりあげ,問題原因の所在への考え方をポイントにおき,より具体的な指導法の工夫が必要であることが,改めて確認されたことである。
著者
前川 倫男
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.85-96, 2000

図書館を新築するにあたり,従来型の図書室だけでなく,メディアセンターと呼べるマルチメディアを活用した教育活動が行える施設設備を整備した。次世代の情報化の基盤となるコンピューターネットワークシステム「CSES」を構築し,これを活用した教育支援システムを作った。図書館総合システムではOPACによる蔵書検索が可能であり,ペーパーメディアの情報と電子メディアの情報から,必要とする情報をシームレスに得られるように工夫した。サーバー機器群に基礎情報データベースや教材データベースとなるソフトウェアーやコンテンツを導入し,情報を蓄積するデータバンクとしての機能を持たせた。コンピューターを情報ツールとして利用することで,生徒には予習復習や自学自習等の学習活動の支援,進学情報の提供を,教師には授業研究や教材作成,進学指導等の教育活動の支援を行っている。また,コンピューターリテラシー教育も行い,授業活動へのコンピューターの利用を支援している。さらに,インターネットヘの情報発信だけでなく,ホームページやグループウェアーを利用し,校内イントラネットヘの情報発信を行い,情報の共有化・協同化を目指している。
著者
米山 龍介
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
no.9, pp.109-116, 1999-08-12

本稿は音楽に必要な音程・リズム・ハーモニーを,オーボエの演奏という観点を通してどのように体得するのかを論じたものである。
著者
米澤 好史
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.51-60, 1995-08-20

本論では,米澤(1994)を受けて,学習過程,問題解決過程における「理解」の重要性を指摘することを目的とした。その際,問題解決者が理解の重要性を自覚すること,そして,問題解決者にとっての理解の意味を,学習指導者たる教師が単に枠組み的知識としてではなく,真に認識することの必要性を指摘した。まず,いくつかの具体的な問題解決場面を取り上げ,認知心理学実験の知見をもとに,学習者にとっての理解の意味を問い直す指摘をした。更に,筆者自身の大学における論文理解の授業からの報告も含めて,真の理解のために必要な指導観を指摘し,学習者の視点に立つことの意味を再吟味した。こうした具体的な指摘と考察を通じて,学習者と教材との「かかわり」を規定し,その後の問題解決そのものに多大な影響を与える理解過程の分析を行い,学習者が理解時に,その理解状況と意味,及び自らの理解の視点に「気づく」ことの重要性を指摘した。
著者
早田 武四郎 加澤 恒雄
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要
巻号頁・発行日
vol.4, pp.73-83, 1994-08-20

英語教育における訳読教授法の弊害はよく議論されることであるが,その歴史や背景,効果的活用法については,あまり聞かれない。小池生夫他編「大学英語教育に関する実態と将来像の総合的研究(I)-教員の立場-」によると,大学英語教育において7割,高校英語教育において5割,中学英語教育において2割弱,訳読教授法が採られている。1991年7月,大学設置基準が改訂されて以来,大学教育におけるカリキュラムや授業方法の改善に向けた努力は全国的なうねりとなっている。高校英語教育も大学入試の改善によって,望ましい方向に変っていくであろう。しかし,今なお,大学,高校において,訳読教授法による授業の比率は高いと考えられる。このような現状の中で,訳読教授法の効果的な活用について考察する。
著者
山田 満
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.113-120, 1998

子どもたちがマスメディアを通して垣間見る国際社会は,サミットの議題となる先進諸国間の経済摩擦やそれをめぐる政治交渉であったりする。そして,発展途上国の貧困や飢餓の問題であったり,あるいは民族紛争や地域紛争を起因とする大量の難民流失や彼らの悲惨な光景であったり,さらには経済的目的のために移民する外国人労働者であったりする。そこで,錯綜化する現代国際社会の諸問題を本質的に理解する能力と解決への糸口を考察する能力を培う揚が求められている。現在の教育現場で推進されている国際理解教育はその意味で重要な役割を負っていると言えよう。しかしながら,日本の「国際理解教育」が予期する理念・目的だけでは現代的諸問題を理解するには不十分であると言わざるを得ない。本稿では国際関係論的視野から「国際理解」や「国際協力」を含めたグローバル教育の必要性を提起してみたい。
著者
萬戸 克憲
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.165-171, 1995-08-20

This paper discusses the English proficiency of Japanese students on the basis of 1991〜1993 TOEFL Tests. The concept of the TOEFL Test, its validity as a proficiencytest, and the comparative position of Japanese students are examined. The poor performance of Japanese students is often attiributed to the lack of the linguistic affinity to English, but this is partly negated by the studies of the performance of students from European and other Asian countries, leading to the conclusion that there are some serious deficiencies in ELT itself in Japan.
著者
早田 武四郎
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.109-112, 1994-03-31

「英語の歌」と聞けば,楽しいイメージを持つ人は多い。中学校,高校,大学と続く英語学習の中で,英語の歌を教えてもらった経験のある人は,そう多くはないと思われる。筆者も教えてもらった記憶がない。教えてもらったら,さぞ楽しいだろうなと思ったことがある。そのような思いが,教師になってからの筆者に,英語の歌を授業に取り入れさせることになった。取り入れるといっても,年に1,2回であった。大学生を対象とするようになってから,1983年度,英語の歌をグループ・ワークの課題にしたことがあった。この時は,何もしない群と比べて有意差は現れなかった。8年後の1991年,英語の歌のテキストとテープ(歌詞の朗読,カラオケ付き,米国の女性歌手吹き込み)を受講生全員に購入させ,授業外に自習させた。そして後期の定期テストの前に英語の歌のテストを行った。本稿はこの時のデータによって英語の歌の効果を検討する。
著者
中 俊博 小西 光子
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.75-84, 1994-03-31

この論文は幼児期と学童期とのスポーツ指導の接点を考える上での基本的な問題について検討すべく,4歳児,5歳児にゲーム遊びを(じゃんけん,鬼ごっこなど)1ヶ年間援助し,この援助過程での幼児の活動を観察・考察した事例的研究である。その主な結果は,1),4歳児はゲームのルールを理解して遊ぶことよりも,走る,跳ぶ,よじ登るといった基本的な運動遊びに興味がつよい。2),5歳児は個人差があるものの仲間との教え合いでゲームを理解している。3),5歳児はルールを工夫してゲーム遊びを発展させて楽しめる。このことから,基本的には4歳児はゲーム遊びへの準備期と捉え,基本的な動作学習と仲間の存在を知って遊ぶ時期であり,5歳児は仲間と一緒にゲーム遊びの体験を豊富にする時期であるといえよう。
著者
楠山 芳章 山川 佳孝
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.139-145, 1995-08-20

この報告は大学に進学しなかった者が高校において学んだ化学及び化学実験についてどのように受け止めているかについて調査した結果を記述したものである。調査対象は高等看護学院学生で,非理科系学生と答えた者が93.1%で実質的に非理科系の学生の意識調査とみなされる。調査対象者43名全員が化学に関連した実験について嫌悪感情を抱いておらず,14人が楽しかったと答えている。化学実験は化学を勉学する具体的な作業であり,授業にこれを多く取り入れることが理科及び化学離れを防ぐ有効な教育手段であることが理解できる。

1 0 0 0 OA せせらぎの書

著者
天野 雅郎
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-11, 1993-03-31

どだい,このような前口上など不均合いにして不似合いな,この「せせらぎの書」の一席が読者の皆様に,その名のとおりシェイクスピアの『お気に召すまま』の一節を借りうけて,お届けいたそうと願うのは古代日本人の呪術的宇宙である。それを『古事記』や『万葉集』等に物語られた,いわゆる神と魔,あるいはカミとモノとの一体となった世界,すなわちタマ(霊・魂)の世界の神話的伝承群と言い換えてもよい。ここでは類似のものは類似のものを産み出す(Similia Similibus)という黄金律につらぬかれ,すべてのものが一から他へと,その無限の相互反射をくりかえしている。さながら眼前の細流(せせらぎ)が時により,ある時は植物へと,ある時は動物へと,そしてある時は人や神すらへと,その姿を変幻自在にすりかえていくかのように。とどまるところをしらない融即と変身のスペクタクルの一端を,ご笑覧いただければ幸いである。