著者
大嶺 哲雄
出版者
沖縄大学
雑誌
沖縄大学紀要 (ISSN:03884198)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.31-78, 1995-03-01
被引用文献数
1

A.目的:沖縄島の土壌動物相の基礎的研究(1) 1)基地内の土壌動物を総合的生態系に位置付けて動物相を把握するために土壌動物目録を作成し、琉球列島とハワイの自然とをむすび、ハワイ自然保護協会の国際的コードにのせて環太平洋の島ショ(嶼)性生態系の保護計画に役立たてる。2)基地内と一般民間地域の土壌動物の種構成や分布などの相違があるか否か、対比する資料作成のため。3)管理された地域と自然野性区域との差異についての資料作成。B.意義:冒頭ですでに述べたように、本プロゼクトは「嘉手納米空軍基地内の評価に必要な生物相の目録の作成と管理」に必要な資料収集することにあり、「生物的文化的資源を明確にし、これらの課題の可能な管理方法を検討する。このために米国、州、民間人の相互連絡と協力を得る」ことになっている。これまで基地内の自然保護に関しては日本に在って日本の法律が届かないいわば治外法権的な状況にあり、その実態は知られていない。したがって今回主たる課題を生態学的な科学的基礎調査を重ねて、絶滅の危機にある種や貴重な生態系を保護する点にある。米.琉合同でのこのような調査の試みは、今回が初めてであり、国際的視点に立ち、島ショ(嶼)生態系を保全するための共同研究体制を組み、アジア.太平洋の自然を守って行くことの意義は極め大きく、今後とも共同研究体制での継続研究を望むものである。調査結果の概要 1.沖縄産 土壌動物相の確認(調査区:嘉手納弾薬集積地域18km^2中)6門 10亜門 22亜綱 11目 29科 70属 96種を確認した。2.分布特性(石灰岩)と(非石灰岩)との相違(土壌動物一覧表参照)3.土壌動物と自然環境とのかかわり概要は、以下の通り。(1)真性土壌動物には生産者的役割を持つものが多い。つまり、喰う喰われるの階層としての餌、または分解者として自然界における循環の一環をなす重要な役割をもっている。(2)腐葉土形成にかかせない土壌の重要な要素をもつ。つまり植物界と動物界との栄養的接点として重要である。(3)特殊管理下における地域性および種構成(4)一般原野との種構成の差異の有無などについて考察する。軍施設であるため日頃滅多に入域できない場所であり、弾薬庫云う特殊な地域であるため滅多にない広大な人工生態系の実験場である。一般山野とどのような差異があるか、基礎的データを得るのに貴重な調査であった。印象としては、1.単純な動物相である。2.種類が少ない。貧相である。3.ヤンバルトサカヤスデに代表されるように、侵入種(新参種)の広がりが優勢を占めている。(3)については、在来種を駆達し、侵人種が適応分散する恐れがあり問題点である。

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