- 著者
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小岩 信治
- 出版者
- 静岡文化芸術大学
- 雑誌
- 静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, pp.143-152, 2004
ショパンがピアノ協奏曲を書いた十九世紀序盤に、このジャンルの音楽は今日とは異なるやりかたで出版されていた。フル・オーケストラで演奏するための、全パート譜の揃ったセットのほか、弦楽器とピアノの声部だけの「部分販売」セットがしばしば販売されていた。こうして当時のピアノ協奏曲は、出版されると同時に、ピアノ付き室内楽、つまり管打楽器なしで演奏できる音楽になっていた。それはこのジャンルが、家庭やサロンで、より気楽に楽しめる音楽として存在し得たことを意味している。