著者
古閑 博美
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.145-157, 2003-10-01

今また、論語が注目されようとしている。それは、「心の乱世」と呼ばれる現状があることと無縁ではない。社会や教育の荒廃は、人びとの行動や精神に悪影響をおよぼし、取返しのつかない状況を生む。大学教育の現場で、学生の学力低下や態度不良が指摘されるようになって久しい。社会人としてふさわしい態度を形成するうえで、徳行や礼が実行されない環境を放置してよいはずがない。歴史的経緯からも、論語は、日本にもたらされた当初から教育的価値の高い書物として活用されている。古典に親しむ教育を検証し、かつて実行された日本のよき教育的指導のあり方を、再び学ぶ必要があると思われる。筆者の実践から、現代の大学生であっても、礼をともなった交誼のあり方に心地よさを感じている者が少なくないと断言できる。政治経済・福祉・教育を取り巻く情勢は厳しい。少子化に歯止めが期待できない今日、大学の今後も決して楽観できるものではない。しかし、人間が作った社会である以上、人間がその現実を直視したうえで是正し、よりよいものにしていくしかない。論語に学ぶ意味も、まさにその点にあると思う。

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論語と日本の教育について。「今、なぜ論語かー大学教育の現状から 古閑博美」http://t.co/VqNrN6bN

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