著者
波多野 誼余夫 稲垣 佳世子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.91-104, 2005-02-28

本論文において,人間の心が発達するのは,文化,すなわち何世代にもわたって蓄積され,共同体により共有された人工物を取り入れることによってである,と我々は提案する。我々のアプローチは認知的である。というのは,人間における知識と技能の獲得は,種々の内的ないし認知的制約のもとで行われると想定しているからである。我々のアプローチは社会文化的でもある。というのは,獲得された制約は,たいてい社会文化的な起源を持っており,人間は知識や技能を相互作用的な社会文化的制約のもとで獲得する,というのが我々の主張だからである。本論文では,非特権的な領域で生じる発達(すなわち熟達化)と特権的領域ないし思考の中核領域における概念的発達と変化の両方を論じ,文化がこれらの発達の基本的構成要素であることを論証しようと試みている。このように文化を強調することは,発達論者に対して,いくつかの研究課題と研究デザインを示唆する。

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