著者
山岸 美希 板倉 嘉哉
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.299-305, 2007-02

映画「風の谷のナウシカ」に登場する架空の乗り物であるメーヴェの飛行可能性を検討するために,実機を忠実に再現する模型を製作し,風洞試験によりメーヴェの空気力学的特性を明らかにした.また,風洞試験結果に基づいて,飛行に必要な基本的な性能および安定性の評価をおこなった.その結果,メーヴェは飛行を実現するのに十分な性能を有するが,現在の機体形状のままでは縦揺れの安定性を確保することができず,飛行の実現は困難であることがわかった.Mowe is a fictional flying vehicle appeared in the animated cartoon "Nausicaa of the Valley of Wind". The airframe configuration of Mowe is very unique without vertical and horizontal tail, and its main wing is only equipped with flaperon as a pitch and roll control surface. However, to realize a tail-less plane such as the Mowe, detailed consideration about the aerodynamic configuration is needed from a viewpoint of aeronautical engineering. In this paper, in order to obtain aeronautical characteristics, aerodynamic forces and moments acting on the scale model with deflectable flaperon were measured experimentally by using wind tunnel at Chiba University. And we also estimated aerodynamic performance and stability based on a result from wind tunnel testing and considered realization of the flight.
著者
安部 朋世 神谷 昇 西垣 知佳子 小山 義徳
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.209-213, 2017-03

[要約] 本稿は,「データ駆動型学習(Data-Driven Learning; DDL)」開発の基礎的資料とすべく,現行の中学校国語教科書及び英語教科書に現れる文法用語を調査し,DDLによる文法指導における注意点や問題点等を整理することを目的とするものである。具体的には,中学校国語教科書と中学校英語教科書における「品詞」の現れ方と,小学校及び中学校国語教科書と中学校英語教科書における「文の構成要素」に関する用語の現れ方を調査し,国語と英語の品詞の内実の違いについての注意点や,文法用語の使用状況に関する問題点を明らかにするとともに,本研究を踏まえ,今後実践研究における分析を行うことにより,文法用語の適切な使用のあり方について考察を行っていく必要があることを指摘した。
著者
井上 孝夫
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.223-227, 2005-02-28

東北地方を中心に行なわれている民俗芸能・鹿踊り(ないしは,獅子踊り)の起源については,これまでいくつかの説が唱えられてきた。そのなかで,マタギ起源説はマタギ集落と伝承地が一致しないため,説得力に乏しい。世上流布しているのは人間による鹿の模倣説で,宮沢賢治の「鹿踊りのはじまり」に依拠して語られることが多い。これに対して,本稿は鹿踊りは製鉄の民俗の一種であることを主張する。そして畠山重忠と日蓮の関連性から,宮沢賢治説の表層性(あるいは,非土俗性)と限界性を指摘する。
著者
山岸 美希 板倉 嘉哉 Yamagishi Mickey 板倉 嘉哉 イタクラ ヨシヤ Itakura Yoshiya
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.299-305, 2007-02

映画「風の谷のナウシカ」に登場する架空の乗り物であるメーヴェの飛行可能性を検討するために,実機を忠実に再現する模型を製作し,風洞試験によりメーヴェの空気力学的特性を明らかにした.また,風洞試験結果に基づいて,飛行に必要な基本的な性能および安定性の評価をおこなった.その結果,メーヴェは飛行を実現するのに十分な性能を有するが,現在の機体形状のままでは縦揺れの安定性を確保することができず,飛行の実現は困難であることがわかった.Mowe is a fictional flying vehicle appeared in the animated cartoon "Nausicaa of the Valley of Wind". The airframe configuration of Mowe is very unique without vertical and horizontal tail, and its main wing is only equipped with flaperon as a pitch and roll control surface. However, to realize a tail-less plane such as the Mowe, detailed consideration about the aerodynamic configuration is needed from a viewpoint of aeronautical engineering. In this paper, in order to obtain aeronautical characteristics, aerodynamic forces and moments acting on the scale model with deflectable flaperon were measured experimentally by using wind tunnel at Chiba University. And we also estimated aerodynamic performance and stability based on a result from wind tunnel testing and considered realization of the flight.
著者
澤田 典子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.303-327, 2019-03

[要約] 本稿は,ギリシア世界の権力者崇拝の文脈にマケドニア王フィリポス2世を位置づけ,権力者崇拝という現象の発展における彼の歴史的意義を明らかにすることを目的とする。前半部(本号)では,フィリポス2世以前のギリシア世界における権力者の生前崇拝を示唆する事例と,ギリシア諸都市がフィリポス2世に神的崇拝を捧げたとされる事例を検討し,後半部(次号予定)では,彼自身が自己神化を志向していたことを示すとされる事例を検討した。フィリポス2世は,晩年に諸都市から宗教性を帯びた大きな栄誉を受けており,ブラシダスからリュサンドロスへと発展した外部権力者への「迎合」としての都市祭祀の流れに大きくはずみをつけたと見ることができる。さらにその最晩年には,自身のみならず自身の家族をも神々と肩を並べる存在として宗教的なコンテクストに位置づけ,ヘレニズム時代の王朝祭祀へと発展していくひとつの方向性を示したと言える。
著者
佐藤 宗子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Chiba University (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
no.67, pp.410-402, 2019-03-01

[要約] 第二次世界大戦後に刊行された少年少女向文学叢書は、新制中学発足に伴う十代前半の「少年少女」読者の出現をうけて、この新しい読者層に対する「教養形成」の役割を担った。これらの叢書のうち日本近代文学を対象とする叢書は、1950年代以降、当初はカノン形成が図られつつ国語教育の補完的意義も比較的強く有していたが、60年代に入り、偕成社「ジュニア版 日本文学名作選」において、また対抗するポプラ社「アイドル・ブックス」においては、作品主体の叢書となり、書目の編成にも特定作家や特定作品の定着が見られるようになってきた。また、それらの叢書は、資料館に残された読書の痕跡等から、家庭における読書を念頭に置いたものであり、近しい年長者から年少の読者に向けて、「教養形成」を図る趣旨で手渡されていたことが容易に想像される。こうした叢書が1980年代まで20年近く読み継がれていた事実を、児童文学全体の中でどのように評価すべきかは、今しばらく時間をかけて検討していく必要があるだろう。
著者
金子 功一 大芦 治 Kaneko Kouichi 大芦 治 オオアシ オサム Oashi Osamu
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.79-87, 2010-03

本論文では,近年の学習方略に関する海外および日本における研究の動向を分析した。その結果,学習方略はその研究対象として,学習全般と個別の教科を扱ったものの双方があること,研究の多くが自己効力感や価値といった動機づけ要因,学習方略に対する認知や学習観を代表とする自己制御要因などとの関連を検討していることなどが明らかになった。また,学習方略の測定に関する諸問題についても検討を加えた。そして,今後の課題として,学習方略と発達差,将来の目標,教師の職業的援助などに関する研究を行っていく必要性を論じた。
著者
畑中 恒夫 田村 暁良 浅村 恵未
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.309-316, 2005-02

ネズミ駆除器の電磁波がマウスの生理作用に様々な影響を及ぼすことが知られている。それらの電磁波に対する感受性がマウスの成長段階により異なるかどうか確かめるため, 成体, 幼若体及び乳児を市販のネズミ駆除器の電磁波に曝露し, 影響を調べた。その結果, 成体では電磁波を感じ装置を避けることが示されたが, 長期間の曝露に対しても, 曝露期間中, 餌及び水の摂取量と体重に変化がなかった。また, 幼若体も順調に成長し, 共に電磁波曝露の影響が見られなかった。しかし, 乳児は3分の2が曝露期間中に死亡し, 生存した個体も成長が遅れ, 授乳期には電磁波曝露は重大な影響を及ぼすことが示された。
著者
鈴木 宏子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.424-420, 2020-03

[要約]『土佐日記』は、五十五日間におよぶ舟旅の日記であり、旅の始まりから終わりまでの枠組みの中に五十五日分の小単位が連なるという構造を持つ。そして、それら小単位の中には、その日に起きたことや思ったことでさえあれば、どのような内容でも書き込める自由さがある。小稿では『土佐日記』の中から三つの場面を取り上げて、この作品の多彩な魅力を探りたい。一つめは二月五日条で、舟旅の困難さや、世俗の人へのシニカルな批評意識、また緊密に照応しあう言葉の連鎖が看取される。二つめは十二月二十七日条で、土佐で亡くした幼い娘に対する悲嘆と思慕が書き記される。三つめは一月二十日条で、月の出入りを通して海の広がりを捉える方法や、『古今集』撰者でもある紀貫之の文学論を読み取ることができる。
著者
佐藤 宗子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Chiba University (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
no.69, pp.334-329, 2021-03-01

[要約] 「現代児童文学」を代表する作家・評論家の一人、古田足日の中級向けSF短編集『月の上のガラスの町』所収の「アンドロイド・アキコ」は、一九六四年に初出誌に発表された時点から、盛光社刊行の初刊、そして加筆訂正された童心社版と、改稿されつつ読み継がれてきた。古田の短編の代表作である同作の改稿過程を丁寧に検証することを通して、そこにみられる「子ども」観、「ジェンダー」観、さらには「恋愛」にまつわる言説に関する「近代」観を追究していった。古田は六〇年代の早い時期からSFに関心を抱き、月面上の町という架空の設定をしたが、そこでの男女の人物造型における当初の自身の設定を、後の加筆訂正で否定してみせる。そこには、「枠」から「枠組み」へと子どもを見る目を問い直すという後の提唱につながる意識を見ることができる。今後は、同時期の古田の批評活動や「現代児童文学」の動向も視野に入れて、より広がりを持ちつつ、この作品を基軸として追究していくことができるだろう。
著者
平出 昌嗣 ヒラデ ショウジ Hirade Shoji
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.359-364, 2013-03

イギリスは旧世界として階級意識が根強くあり,下層から上層階級へ出世する物語,あるいは階級の束縛から脱出する物語など,小説も階級意識を多少なりとも反映する。一方,新世界アメリカは自由の国であり,旧世界のような階級意識はないが,代わりに,南部では黒人差別,北部では貧富の差が社会問題としてよく描かれる。また人間の成長を描く際に,イギリスは経験に価値を置き,アメリカは無垢に価値を見る傾向がある。前者では,主人公はつらい経験を通して真の自己に目覚め,人間的に成長するが,後者では,どんな経験によっても失われることのない生まれつきの心が重視される。また各文学を特徴づけるイメージを一つ挙げれば,アメリカ小説は道,イギリス小説は家になる。道は自由,あるいは未来志向の,家は安定,あるいは伝統志向の象徴になる。
著者
澤田 典子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.247-261, 2020-03

[要約]本稿は,ギリシア世界の権力者崇拝の文脈にマケドニア王フィリポス2世を位置づけ,権力者崇拝という現象の発展における彼の歴史的意義を明らかにすることを目的とする。前半部(前号掲載)では,フィリポス2世以前のギリシア世界における権力者の生前崇拝を示唆する事例と,ギリシア諸都市がフィリポス2世に神的崇拝を捧げたとされる事例を検討し,後半部(本号)では,彼自身が自己神化を志向していたことを示すとされる事例を検討した。フィリポス2世は,晩年に諸都市から宗教性を帯びた大きな栄誉を受けており,ブラシダスからリュサンドロスへと発展した外部権力者への「迎合」としての都市祭祀の流れに大きくはずみをつけたと見ることができる。さらにその最晩年には,自身のみならず自身の家族をも神々と肩を並べる存在として宗教的なコンテクストに位置づけ,ヘレニズム時代の王朝祭祀へと発展していくひとつの方向性を示したと言える。
著者
宮﨑 甲 三枝 一将 松本 隆
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Chiba University (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
no.68, pp.401-410, 2020-03-01

[要約]平安時代後期から鎌倉時代の仏像の造像法研究は,木造仏においては修復事業などによりその成果が蓄積されてきた一方で,鋳造仏(金銅仏/鉄仏)については未だに途上であると言える。平安時代後期から鎌倉時代の鋳造仏の原型および鋳造技法に関しては,現在では木造原型(木型)による割込め型(合わせ鋳型)法が定説となっている。本研究チームは現在,千葉県館山市の那古寺銅造千手観音菩薩立像の科学調査等を準備しており,その過程で類型の多臂仏の調査を行った。本稿は千葉県・長柄町銅造准胝観音菩薩立像,滋賀県・園城寺銅造千手観音菩薩立像,兵庫県・常勝寺銅造十一面千手観音菩薩立像の3軀の調査報告とし,特に腕部の形状や構造に着目して原型および鋳造法について若干の推論を試みた。報告をまとめる過程で,蝋型鋳造法や木造原型焼失鋳造法等,またはその混合技法の可能性について言及することとなった。
著者
花澤 寿 ハナザワ ヒサシ Hanazawa Hisashi
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.269-273, 2010-03

現在までに提出されている摂食障害の進化論的仮説を概観し,進化心理学・進化精神医学による摂食障害の理解と治療の可能性について検討した。主要な仮説として,1. reproductive supression hypothesis 生殖抑制説 2. sexual competition hypothesis 同性間競争説 3. flee from famine hypothesis 飢餓環境からの移動のための適応説 4. Gatward による統合説をとりあげた。いずれの仮説も,現時点では実証困難であるが,摂食障害の不可解な特徴をある程度説明することに成功しており,停滞状態にある摂食障害の病態理解と治療法にあらたな展開をもたらす可能性が示唆された。
著者
畠山 里沙 杉田 克生 大上 順一 杉田 克生 スギタ カツオ Sugita Katsuo 大上 順一 オオウエ ジュンイチ Oue Junichi 下山 一郎 シモヤマ イチロウ Shimoyama Ichiro
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.287-289, 2007-02

認知神経学の観点から,外国語として日本語を学習するイタリア人が,ひらがな・ローマ字を見てから発語するまでの読字反応時間を解析した。外国語の学習効果を客観的に評価していくためにこの検査は有用であると考えられる。We performed a test of "Hiragana" and "Romaji" reading-reaction time to Italian university students who learn Japanese. This test is simple and regarded as a useful method to evaluate their acquisition of foreign language objectively.
著者
伊坂 淳一 佐藤 宗子 鈴木 宏子 安部 朋世
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.39-58, 2018-03

[要約] 小学校教員養成教育における国語科の教科内容(教科の専門的事項)は,その根拠となる教育職員免許法及び同施行規則等の関連項目と,実際に小学校で行われる学習内容を規定した学習指導要領の指導事項との間に整合性を欠いているために,一定の共通理解が得られているとは必ずしもいえないのが現状である。学習指導要領の指導事項も学習者の能力の到達目標として記述されているために,国語科の授業者に求められる資質・能力が明確にされているとはいいがたい。結果として,教員養成段階の小学校国語科の内容を扱う,いわゆる教科専門科目が教養主義に傾いてきたことも否めない。本稿は小学校の国語科授業を担う授業者に対する教員養成教育として,教材研究や授業づくりの前段階として求められる実践的な資質・能力をどう捉えたらよいかを課題とする。おおまかには,実際の国語科授業で行われる学習の内容や活動を授業者自身が行うことができることであると仮定し,そこから逆算して3領域1事項に関わる42項目を提言するものである。なお,この提言は千葉大学教育学部国語教育講座に所属する,いわゆる教科専門教育科目を担当する教員4名による討議を経た共同研究・共同著作である。
著者
谷藤 千香
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.365-371, 2012-03

近年,中高年のスポーツが盛んになりつつある。海外では比較的以前から多くのマスターズスポーツ大会が行われていたが,日本ではまだその歴史は浅い。そこで,各競技団体が行う単種目のマスターズ大会や複数種目で行われるマスターズ大会の日本と海外の事例から現状と課題をあげ,今後のマスターズスポーツについて検討した。単種目のマスターズ大会は,日本では陸上競技や水泳が多く実施され,また,いわゆるスポーツ種目のマスターズ大会は欧米で非常に古くから存在していた。複数種目の大会では,日本スポーツマスターズにおいて生き甲斐を感じる参加者が多いものの,年齢区分などいくつかの問題点が見うけられたが,国際的に行われている最も大きなマスターズの大会であるワールドマスターズゲームズでは,可能な限り誰もが参加できるよう門戸を開き,多くの参加者をひきつけている。今後のマスターズスポーツには,こうした競技スポーツとレクリエーションスポーツの融合した領域が求められる。
著者
安部 朋世 神谷 昇 小山 義徳 西垣 知佳子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.59-64, 2018-03

[要約] 本研究グループでは,英語の語彙・文法指導のひとつの方法として,「データ駆動型学習 (Data-Driven Learning:DDL)」の有効性について,継続して調査・研究を行っている。本稿は,DDL教材・指導法開発のための基礎的データを収集するために,学校英文法と学校国文法が既修である大学生に対して,英語と国語それぞれの品詞に関する理解度調査を行った結果を報告し,学校英文法と国語科文法学習の双方の影響と連携の可能性について検討する。具体的には,大学1年生を対象に調査を行い,その結果から,[ 1 ] 日本語文法と英文法の知識をどの程度正しく身に付けているか,[ 2 ] 日本語と英語の品詞によって理解の程度に差はあるか,[ 3 ] 日本語文法の知識から英語文法の知識に,どのような転移が見られるか,[ 4 ]英語文法の知識から日本語文法の知識に,どのような転移が見られるか,について実態を明らかにする。
著者
井上 孝夫
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.171-178, 2004-02-28

「壬申の乱に敗れたのち,大友皇子は房総の地に逃げ延びた」という房総・弘文天皇伝説は,房総の伝説のなかでも傑出したものの一つである。このような伝説が成立した背景には,この地域が古代の製鉄民族,多(オオ)氏の支配地域だったことと関連していて,大友皇子のゆかりの人々がオオ氏を頼りに房総に移住したと考えるのが最も理にかなっている。それはまた,「田原」地名の分布にはっきりと刻印されている。田原とはタタラであり,製鉄が行なわれていたことを示しているのである。だが古代の末期から中世にかけて熊野修験道が流入し,その結果,オオ氏の祀っていた田原神は白山神へと姿を変えた。これが,現在の白山神社(君津市俵田)に物理姫と弘文天皇が祀られている理由である。
著者
戸田 善治 澤田 典子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.267-276, 2018-03

[要約] 本稿では,西洋史研究における地中海世界の「古代」から「中世」への転換点と,世界史教科書の内容構成及び記述におけるそれの比較検討を行った。西洋史研究においては,「古代」と「中世」,そして「古代」から「中世」への転換点をめぐっては,多様な議論が繰り広げられてきた。また,現在発行されている6冊の世界史教科書における地中海世界の「古代」から「中世」への転換点に該当する部分を分析すると,3つに類型化することができ,その違いは,『平成21年版高等学校学習指導要領』の内容項目(3)イの「ビザンツ帝国と東ヨーロッパの動向,西ヨーロッパの封建社会の成立と変動に触れ,キリスト教とヨーロッパ世界の形成と展開の過程を把握させる。」という記述の後半部分を,「キリスト教とヨーロッパ世界の形成を把握させる」と解釈するか,「キリスト教とヨーロッパ世界の展開の過程を把握させる」と解釈するかによって生じることが明らかになった。