著者
嶋 和重
出版者
拓殖大学
雑誌
拓殖大学経営経理研究 (ISSN:13490281)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.80-110, 2004-03-31

朝鮮戦争を跳躍台として日本経済は一気に停滞を回復する。企業は、朝鮮特需による一定の高収益を足場にし、さらに政府の投資促進・資本蓄積政策によって積極的な"合理化投資"を行いつつ、多様な手段による資本の蓄積を促進していく。それに大きく貢献した会計制度が、資産再評価と税制上の優遇措置であり、さらに実務規範として機能した「企業会計原則」である。資産再評価の効果は、減価償却費の増大、利益の過少計上からの税額、配当、賃金の抑制におる内部資本蓄積の強化であった。税制上の優遇措置は、特別償却・割増償却の容認、各種の準備金・引当金の設定を認める措置であり、資本蓄積と利益の内部留保にとって大きな効果があった。企業会計原則は、「経理自由の原則」に基づき企業経営の健全化を根拠として利益の政策的配慮を容認した。また、近代会計理論に立脚して資産再評価や税制上の過大償却、広範な引当金・準備金経理を合理化し、投資家保護を根拠とする企業主体理論の下、多様な資本概念が採用された。これらによって、資本蓄積促進機能が果たされていったのである。

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