著者
渡部 武
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学紀要 (ISSN:03899543)
巻号頁・発行日
no.25, pp.p171-195, 1992-03

本稿は石門心学の祖石田梅岩 (一六八五-一七四四) の主著『都鄙問答』における「都」と「鄙」の実質的内容を解明し、かつ両者がどのように関連しあって彼の思想形成を可能にしたかを追求する試みである。その結論は以下の通りである。「都」と「鄙」とは問答の当事者ではなく、両者は梅岩の二つの異質な生活体験である。「問答」とはそれぞれの生活体験を沈潜させた梅岩の内なる二つの自己の間の問答である。梅岩の思想は「都」と「鄙」の相互浸透による総合の過程としての問答の成果である。そしてその総合を可能にしたのが「都」と「鄙」の中間者としての梅岩であった。

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