著者
片桐 由喜
出版者
北海道大学大学院環境科学研究科
雑誌
北海道大学大学院環境科学研究科邦文紀要 (ISSN:09116176)
巻号頁・発行日
no.6, pp.p75-128, 1993-03

イギリスは戦後、国民保健サービス法を制定し、医療保障には財源を主として租税に求める国営医療方式を採用することとした。本稿はこのようなイギリス医療保障制度及び前記制定法の形成・立法過程、制定法の意義と問題点の考察等からなる。本稿の問題関心はイギリスが国営方式を選択した理由・根拠である。なぜなら我が国を含めてドイツ、フランス等においては、医療保障に保険制度を採用しており、これら自由主義諸国と立場を同じくするイギリスが医療保障分野において異なる制度をなぜ選択したかを検討することは、医療保障制度の在り方を考えるうえで極めて重要であると思われたからである。イギリスが国営方式を選択した理由には、従来存在していた保険制度の欠陥及びそれに由来する不信感、戦後労働党政権による医療社会化構想等が考えられるという結論を得た。

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