著者
松田 伯彦
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.55-66, 1970-07-31

本研究は,比較的等質な学級(小学4年生10学級)に対して,賞あるいは罰を与える比(学級集団での賞あるいは罰を与えられる人数の比)を,いろいろ変化させることによって,賞あるいは罰の効果が学習にどのように影響するか,そして,それを観察している者(暗黙の強化を受けている者)の学習成績にどのように影響するかについて,文章問題を学習課題として,検討することを主な目的とした。そして,強化パターン(連続強化と部分強化)についてみることである。さらに,被験者の内省報告から,賞あるいは罰,あるいは,暗黙の強化によって,学習者がどのように動機づけられたか,また,被験者の実験者に対する好悪の感情と学習との関係を者察した。文章問題の平均正答数および平均正答率について,第1日目を100とし,各群の5日間の正答数%正答率%の分散分析,および各日ごとの群間の効果の分散分析をおこなった。その結果次のようである。1.学級の少数が賞を受けた時の大多数の無視群,学級の大多数が罰を受けた時の叱責群と無視群の両方,これらの3群では,5日間正答数の有意な上昇がまったくみられない。他のすべての群では多かれ少なかれ5日間に正答数の有意な上昇がみられる。2.賞は学級の少数に与えられる時および学級の多人数に与えられる時も,非常に効果的で,罰は学級の全員に与えられる時最も効果的である。3.学級の大多数の者が賞あるいは罰を与えられる時,無視された者は直接の賞罰以上に間接(暗黙)の強化を受ける。4.連続強化群と部分強化群を正答数で比較した場合有意差はみられないが,正答率において部分強化群がすぐれている。5.内省報告から,賞を直接受ける者およびそれを観察している者は賞を再び得ようとし,罰を直接受ける者およびそれを観察している者は,賞を得ようとする傾向と罰を避けようとする傾向がみられた。6.実験者に対する好悪の感情は,賞を与えられた者は接近的・好意的な傾向が,罰を与えられた者は回避的・非好意的な傾向が漸次増加すると言える。各群の成績ではなく,学級成員全員の成績を考えた場合,全員賞賛または全員叱責ということが最も効果的であるように思われる。しかし,人間関係をも考慮すれば,全員賞賛ということがより効果的で,この点教育上興味深いことである。附記本研究に御協力いただいた千葉市立院内小学校長鈴木将七先生,緑町小学校長勝山正徳先生,寒川小学校長地引登志夫先生,新宿小学校長宍倉芳衛先生,轟町小学校長八代進先生,学級担任の諸先生および児童の皆さんに深く感謝の意を表します。なお,白鳥礼,宇佐美仁孝,山田幸子,松岡和子,二宮砂子,西村信子,斎藤文子君およびその他多くの学生諸君に協力をいただいた。

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