著者
中須賀 徳行
出版者
岐阜大学
雑誌
岐阜大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.2001, pp.3-15, 2002-03

「日本語廃止・英語採用論」として知られる森有礼の著作をとりあげ,実はホイットニー宛の書簡では漢文の廃止と「簡略英語」の日本への導入にとどまり,日本語の廃止までは考えていなかったものが,『日本教育論』序文では日本語の廃止にまで踏み込んだことを明らかにした。森の日本語廃止論に対して,馬場辰猪は英文で口語文法を体系的にまとめあげ,そのことによって教育を日本語で行うことが可能であることを具体的に示したが,彼はとりわけ母語の廃止によって言語エリートと一般民衆の間に亀裂が生じ,言語分裂国家が生じることに懸念を表明していたことをみた。森たちの日本語に対するこうした母語コンプレックスは,西洋との経済力をはじめとする文明的落差の意識を反映したものであり,「21世紀日本の構想」懇談会が2000年に国民的討論を呼びかけた「英語第二公用語論」もその線上にあることを考察した。その上で今後の日本における言語のありかたとして,多言語主義に基づく言語政策を提唱した。

言及状況

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CiNii 論文 -  母語コンプレックスと言語分裂国家 : 馬場辰猪の森有礼に対する反論に寄せて http://t.co/SGaXXGpr #CiNii

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