- 著者
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大森 慈子
- 出版者
- 仁愛大学
- 雑誌
- 仁愛大学研究紀要 (ISSN:13477765)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.59-69, 2002-11-01
本研究の目的は, 瞬目と印象の関係について, テレビニュース番組中のアナウンサーに対して形成される印象が, 瞬目が多い場合と少ない場合とではどのように異なるのかを調べることであった。被験者は, 大学生99名 (男子43名, 女子56名) で, 平均年齢は20.7歳 (年齢範囲17-27歳) であった。刺激としてテレビニュース番組を15sに編集したビデオを用い, そこに登場するアナウンサーの瞬目率によって低瞬目率条件 (24-40blinks/min) と高瞬目率条件 (60-88blinks/min) の2条件を設定した。アナウンサーは, 男性5名, 女性5名, 計10名であった。ビデオを見た後, ビデオ中のアナウンサーに対する印象がSD法 (7点尺度) で評定された。それに加え, ビデオを見ているときの感情状態に対する "快-不快" 評定が行われた。印象評定結果について主因子法で因子分析を行い, "親近性""社会的望ましさ" "力動性"の3因子を抽出した。各瞬目率条件における印象をアナウンサーと被験者の男女別に比較したところ, 男性アナウンサーは, 瞬目が多いほうがより社会的に望ましいという印象であった。また, 特に女性被験者は, 男性アナウンサーに対して瞬目が多いほうが親近性があると評定し, 女性アナウンサーに対しては瞬目が少ないほうが親近性があるとした。力動性に関する印象については, 瞬目と印象の関係は見られなかった。一方, 男性被験者も女性被験者も, 瞬目の多い女性アナウンサーを見ている時がより不快であると評定した。本研究では, 瞬目の多発が否定的に評価されるという先行研究を部分的にのみ支持する結果となったが, 瞬目の多少が, 形成される印象だけでなく, 相手の感情状態にも変化を与えることが示唆された。また, 刺激人物がアナウンサーであったという特異性が, 瞬目と印象の関係に影響を与えた可能性について議論された。