- 著者
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金 龍郎
- 出版者
- 日本大学
- 雑誌
- 日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
- 巻号頁・発行日
- no.40, pp.17-33, 2004
プロレスは、格闘劇や格闘ショーとしての性質を持った興業であり、演劇的要素によって観客や視聴者を熱狂させる。近年、プロレスが不振に喘いでいるのは、この演劇的要素がマンネリ化しているためだ。「闘いのテーマ」をどう設定していくか、また、どんなストーリーラインの中で誰と誰がどんなギミックを身にまとって闘うかといった筋書き (=アングル) が満足に書けないでいる。一方、K-1やPRIDEは、勝負にこだわるという意味でプロレスよりもスポーツライクな興業であるため、本来的には演劇的要素がなくても成立するのだが、これを中継する番組の側がノンフィクションのアングルを付加することにより、一般視聴者の興味や関心を巧みに喚起してきた。2003年大晦日の日テレ「猪木祭り」特番の惨敗とフジ「男祭り」特番の大健闘は、そうしたアングル提示の善し悪しがそのまま視聴率の差となって表れたものだと考えられる。