- 著者
-
江藤 裕之
- 出版者
- 長野県看護大学
- 雑誌
- 長野県看護大学紀要 (ISSN:13451782)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.95-99, 2002-03-31
意味的連鎖という視点からの語源研究の有効性を,healthを例に検証してみた.「健康」を意味するhealthは,「完全な」を意味する古英語halを語源とする.このhalからは,whole,hale,holy,heal,hallow等の語が派生するが,これらの語はすべてhealthと語源を同じくする同族語であり,意味的に関連する.その背景には,「完全なるもの」を崇高なものと讃える古代ゲルマン人の宗教的イメージがある.このように,語の源へと意味的に遡ることで,その語の持つ文化史的背景から,その本質的な根本イメージに触れることができ,今日的意味の奥底を理解する糸口をつかむことができる.また,言葉を手がかりに,物証の残っていない古代人の頭の中,すなわち「人間により認識されたもの」を認識し,そのイメージの世界が言葉の中に残っていることを理解する手がかりを得ることができる.