- 著者
-
佐藤 直之
鎌田 貢壽
- 出版者
- 北里大学
- 雑誌
- 北里医学 (ISSN:03855449)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.3, pp.256-266, 1988-06-30
ラット腎糸球体蛋白(GP)で誘導される Heymann 腎炎(HN)の作製に成功し,このHNとラット腎尿細管蛋白(Fx1A)で誘導されるHNとの病理学的,免疫学的差異を検討した。1%未満の尿細管断片を混入する腎単離糸球体よりGPを作製し,ルイスラットを,180μg GP, 240μg GP, 180μg Fx1A, 1.8μg Fx1A, 2.4μg Fx1A,生食のいずれかで免疫した。12週までに,240μg GP, 180μg Fx1A群のラットのすべてが陽性蛋白尿(20mg/日以上)を呈したが,他群のラットは16週まで1匹も陽性蛋白尿を呈さなかった。16週の腎組織所見は,240μg GP群,180μg Fx1A群のすべてのラットでGBMに沿ったIgGの顆粒状沈着を認め,電顕にて上記2群の糸球体内 deposits の局在様式に差異がないことが確認された。また,240μg GP群の16週腎単離糸球体より溶出したIgGは, ImmunoprecipitationでGP中の700kDの糖蛋白(gp700)及びFx1A中のgp700,gp460,gp330を沈降させた。腎糸球体蛋白でHNが誘導され,その抗原はgp700である。