著者
テオ ヘルマン
出版者
関西大学
雑誌
関西大学外国語教育研究 (ISSN:13467689)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.79-93, 2004-03

言語心理学とは何か。この間いに(1)若干の概念的区分と(2)言語心理学的研究諸例で答える試みがなされる。(1)言語心理学は心理言語学と幾多の問題を分かち合い、緊密な研究協力を介して結びついている。しかし、両学問分野の理論的出発点と目標設定は同じでない。言語心理学は言語行動(発話とその理解、読み書き)、この行動の条件となる心的および神経学的機能を扱う。その際重要なのは、言語機能および他の心的諸機能、例えば思考や記憶、情緒との密接な結びつきである。基礎心理学の一分野である言語心理学の対象は、正常な成人である。逆に言語科学の分野に属する心理言語学は、矛盾なく一義的、統一的でよく整ったコミュニケーションに適する文やテクストを生成するために、システムとしての言語、特に個別言語体系がどのような諸前提を与えるかを研究する。従って、心理言語学の理論的出発点は、個人を超える理念的システムとしての言語(language)である。言語心理学の出発点は話す個々人(ラテン語のhomo loqens)であり、その言語行動(speech)および心的神経学的諸条件である。本論の前半は、言語心理学で重要な若干の下位概念区分がなされる。(2)実験的な言語心理学の研究法とその結果が6つの例示により具体的に述べられる。すなわち、(i)文意の理解やその言語的、状況的文脈への埋め込みとしての言語受容、(ii)話し手・聴き手の空間的距離に応じた声量の自動的調節とその進化論的行動決定因の仮説、(山)要求表現とその状況的諸条件、(iv)話し手・聴き手に関わる対象呼称の実験的区分、(v)状況的文脈の有無による理解の文処理、(vi)言語産出における語彙検索と語形実現、プロソディーの実験的分析である。

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