著者
丸山 マサ美
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.17-27, 2006-02-28

近年,生殖補助医療の進歩は著しく,不妊症患者をめぐるさまざまな調査が行われている.しかし,当事者である不妊症カップルを対象にした生殖技術に対する調査は少ない.今回,現在,治療中の不妊症カップル(A市B施設において,治療中の不妊症カップル122名(男性58名,女性64名),回答者の年齢平均 男性36.3±4.5歳,女性33.8±3.9歳)について,生殖技術に対する態度の意識調査を行い,各質問項目と『子供の有無』別,『性別』に統計解析を行った.調査は,平成14年10月19日〜平成15年8月27日実施した.調査票の質問項目は,フェイスシートを用意し,生活観4項目,人生観5項目,生殖技術の是非と推進8項目,AID (Artificial Insemination by Donor)について7項目,生殖医療の将来4項目,将来の家族設計・生殖技術に関する態度4項目であった.生殖補助技術について,「子供の有無」別と関連の高い項目は,「AIDに対する態度」,「営利目的でなく精子バンクとして精子を管理する事」の2項目が該当し,「AIDについては,自分自身はしない.他人はかまわない」,といった姿勢にあった.「子供の有無」別にかかわらず,「卵提供」・「胚提供」については,利用の意思がなかった.また,子供をもつカップルは,利用するだろう技術として「AIH」,「IVF」,「排卵誘発剤」と答えたが,子供のいないカップルは,「AID」,「代理出産」,「代理母」,「人工卵」,「人工精子」の技術利用を期待していた.また,「性別」と関連の高い項目は,「患者自身の不妊経験」,「身近な不妊経験者の存在」であった.女性を取り巻く日常生活の環境要因とその経験に何らかの影響があるようだ.生殖補助医療においては,被実施者である不妊カップルを中心にその出生児,さらには,提供者のプライバシー保護が重要であり,子の福祉を考慮した倫理的,法的,社会的議論が今後さらに期待される.

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