- 著者
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浅見 崇比呂
- 出版者
- 日本貝類学会
- 雑誌
- 貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.3, pp.249-257, 1993-10-31
1. 巻型の遅滞遺伝は、Lymnaea peregra (Muller)について初めて証明された。しかし、Lymnaea属の他種には巻型変異が検出されないため、巻型の遅滞遺伝が同属に一般的な現象か否かを確認することは困難である。しかも、モノアラガイはL. japonica Jayの和名として定着している。したがって、モノアラガイを一般名称あるいは和名として遅滞遺伝の解説に用いることは誤りである。そこで、これまでの誤謬を改め、モノアラガイとL. peregraの識別を容易にする目的で、L. peregraの和名ソトモノアラガイを提唱した。2. ソトモノアラガイのほか、巻型変異の研究に用いられた以下5種の外国産巻貝について和名を選定した。Laciniaria biplicata (Montagu)フタヒダギセル、Partula suturalis Pfeifferミゾマイマイ、P. mirabilis Cramptonハテナマイマイ、P. tohiveana olympia Cramptonオリンピアマイマイ、Cerion glans (Kuster)カシノミオオタワラ。3. 巻型変異およびその遅滞遺伝に関して現在までに得られた遺伝学的および進化学的な知見を総説し、未解決の問題について議論した。遅滞遺伝、母性遺伝、および細胞質遺伝の誤解とそれらの用語使用における現在の混乱は、日本における母性遺伝の定義をめぐるこれまでの歴史的経緯に起因する。