- 著者
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平出 昌嗣
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, pp.203-208, 2006-02-28
日本は湿気の多い国であり,その文化も,まるで霞に包まれたかのように,曖昧で,流動的で,しっとりした情緒を重んじる。一方,湿気が少なく,空気が澄んでいる西洋では,明るい光を当てるかのように,鮮やかなもの,明確なもの,ドライで理性的なものを好む。それは人の話し方や生き方,あるいは絵画や音楽や文芸にも見て取ることができる。例えば西洋の油絵は事物を立体感や重量感を持ってリアルに描き,日本の水墨画は,まるで霧がかったように,平面的であっさりしていて,何も描かない空白部分を多く持つ。言い換えれば,日本は包む文化であり,むき出しのもの,裸のものを隠そうとするが,西洋は広げる文化であり,覆いを取り払ってすべてを光の下に明らかにしようとする。文芸に描かれる理想の空間も,日本では人をやさしく包んでくれる子宮のような閉じられた空間であり,西洋は天から光が降り注ぐ明るく開かれた空間になる。