- 著者
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大前 敦巳
- 出版者
- 上越教育大学
- 雑誌
- 上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.2, pp.565-579, 2006
本稿は,今日の大学生における文化資本をめぐる問題について,「学生消費者主義」や「大学の商業化」など,高等教育拡大がもたらした多くの国々に共通してみられる変化の状況との関わりの中で検討する。フランスの国立学生生活観察研究所(OVE)が実施する全国学生生活調査の結果を参照しながら,関西と北陸・上越の大学・短大生を対象に実施した質問紙調査の結果に基づき,学生の社会的出自,過去の学習経験,現在の学生生活との関係を分析した。親の職業や学歴に規定される階層文化以上に,後天的な学習経験や学生生活へのコミット/アルバイトを含む経済生活への親近性,という対立軸が,正統的文化/中間文化/大衆文化といった文化活動の違いを生み出す傾向が認められた。消費文化との連続性をもちながら,文化資本の形成条件となる「必要性への距離」を提供しているのは,社会的出自よりも学枚,特に大学の場においてであり,大学が変化に直面する中,その機能を衰弱させないことが必要と考える。