著者
中里 理子
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.341-353, 2006-03-20

日本語のオノマトペ研究は,従来和語のオノマトペ(和語系オノマトペ)を中心に考えられてきた。漢語由来のオノマトペ(漢語系オノマトペ)は,その存在を認められながらも,擬音語・擬態語辞典でもほとんど取り上げられてこなかった。しかし,漢語系オノマトペの中でも,畳語形式のものは語によって古くから和語系オノマトペと受け取られているものもあり,和語系オノマトペと深い関わりを持っていると考えられる。「しんと」と「しんしんと」や「ぼんやり」と「茫然」の例に見るように,漢語系オノマトペは語形面でも意味の面でも和語系オノマトペに大きな影響を与えている。漢語系オノマトペに着目し,その関連で和語系オノマトペを見ることは,オノマトペの生成や音象徴性,動詞や使用文脈との結びつきの強さ,意味の変遷など,オノマトペを幅広く捉えていく際の大きな手がかりになると思われる。
著者
大前 敦巳
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.509-523, 1995

小論は,フランスの社会学者であるP.プルデューが提唱する「社会空間」と「界」の構築という観点から,彼の経験的研究をわが置のケースに活用する可能性を模索する。この経験的研究の目指すところは,観察された可変要素の一つひとつのうちに,不変の要素,つまり「構造」を把握することである。そのために取らなければならない諸規準は,以下のように整理することができる。1.実体論的思考様式に代わって,関係的思考様式を採用すること。2.自生社会学との切断を行なった上で,対象の構成を試みること。3.個別の要素に事実を還元するのではなく,事実の体系的構成を行なうこと。4.位置空間と態度決定空間の同型性と,その相対的な自律について検討すること。5.客観化によって生じた現実との距離を,さらに客観的に把握してみること。もちろん,上記の諸規準は,実際にデータの収集・分析を行なうことを前提にしており,そのかぎりにおいて小論の議論は意味を有することができる。Cet article a pour objet d'explorer la possibilite de realiser dans le cas du Japon les recherches empiriques effectuees par Pierre Bourdieu. Particulierement, j'ai examine les methodes pour construire l' <espace social> et le <champ>. Il est important de saisir, dans chaque element variable observe, des elements invariants, c'est-a-dire la <structure>. Pour prendre cette perspective, il faut adopter les criteres suivants. 1. adopter le mode de pensee relationnel en substituant au mode de pensee substantiel. 2. construire l'objet d'analyse apres avoir coupe la sociologie spontannee. 3. construire systematiquement des faits sans les reduire en chaque element. 4. examiner d'abord l'homologie entre l'espace de positions et l'espace de prises de position, et puis l'autonomie relative de cet espace. 5. objectiver la distance entre le produit de l'objectivation et la realite. Bien sur, ces criteres presupposent que la collection et l'analyse des donnees sont effectivement actualisees. Dans ce cas la, cet article pourra avoir son efficacite.
著者
我妻 敏博
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.653-664, 1998-03

我が国の聾学校において手話がどの程度導入されているか,その実態を明らかにする目的でアンケート調査を実施した。聾学校100校に調査用紙を郵送し,75校からの回答を得た。調査内容は授業中や授業以外に手話を使っている教師や子供がどの程度いるか,父兄からの手話導入の要望の有無,将来の手話導入計画の有無などであった。調査の結果,全く手話を使用していない聾学校の割合は約35%であった。一方,小学部以上において学校全体で手話を導入している聾学校は全体の約25%あり,一部の教師や子供が手話を使用している聾学校まで含めるとその割合は約65%に達した。父兄からの手話導入の要望,将来手話導入の計画の有無の結果などから,今後手話を導入する聾学校はますます増えるであろうと予測された。手話や指文字を使わず音声言語中心の聴覚口話法が主流であった我が斑の聴覚障害児教育は,現在変貌を遂げつつあると思われた。
著者
平野 俊介
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.457-475, 2002

バルトークの初期の作品である〈14のバガテルOp.6〉は,バルトークの純粋な創作から民謡に基づく作品まで実に多様な様式の曲が含まれている。従って,この作品を分析することにより,若いバルトークがどれくらい独自の音楽語法を駆使し得たかを知ることができる。本研究では,各曲の考察を通して,初期のバルトークの変化に富んだ創作過程や音素材の多様な扱いに光を当て,それを明確にすることができた。Fourteen bagatelles are one of Bartok's early works. These pieces are made of various original works and pieces based on Hungarian peasant songs. Therefore, through the analysis of these pieces we can find out Bartok's original methods of composition. As a consequence of this research, through the study of each piece I hav revealed various usage of sound materials and varied creative processes in Bartok's early years.
著者
梅野 正信
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.53-65, 2015-03

日本による植民地支配下及び実質的な統制下に設置されていた中学校,高等女学校,師範学校では,他の諸学校と同様に校友会雑誌が編纂されていた。校友会雑誌は,行政機関や当局の検閲を受け統制されていたが,生徒による記述が掲載されている点で貴重な史料である。本研究では,台湾,朝鮮半島,関東庁,樺太庁,「満洲国」で編纂されていた校友会雑誌に描かれたアジア認識を考察する。これらの諸地域の校友会雑誌は,これまで本格的な研究対象とされてこなかったが,本稿においては,先行研究と比較して史料分析の方法を中心に検討した結果,誌面構成,誌面を統制する行政・軍,学校側関係者の記載欄,散文や修学旅行に関する記載欄など,題目ごとの記述からアジア認識に関わる関連語を抽出する研究,横断的比較研究が可能であること等を確認した。
著者
角谷 詩織 無藤 隆
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.101-112, 2010-02-28

本研究では、テレビ番組の種類として、特に、日本民間放送連盟から放送モラルについての要請が出された経緯をもつ、ドラマ、お笑いのバラエティ、トーク番組、歌・音楽番組の視聴が、子どもの社会的・心理的不適応を高めるのかについて検討する。首都圏40km圏内から無作為抽出された、第一回調査時の小学5年生1,006名を対象とし、2001年2月〜2004年2月の間、毎年1回の縦断的調査を実施した。テレビ要因の他に、子どものメディア所持、テレビゲーム、スポーツや勉強の得意不得意、担任教師との信頼関係、生活習慣、学校の楽しさといった、子どもの社会的・心理的適応に重要な影響力をもつとされている要因を含めた分析を行った。縦断的因果関係を検討するに当たり、小学5年生から小学6年生、中学1,2年生へ、小学6年生から中学1,2年生、中学1年生から中学2年生への縦断的偏相関係を求めた。分析の結果、長期的に子どもの社会的・心理的不適応を高める要因が見出された。児童期後期におけるドラマ、お笑いのバラエティ、トーク番組、歌・音楽番組の視聴は、特に中学生になってからのルール違反傾向や不安傾向を高める要因として機能する可能性が示唆された。「よく見る番組」の要因は、小学5年生から中学2年生にかけて、社会的・心理的不適応状態に比較的安定した影響力を示したことから、その影響が無視できないものであることが推測された。
著者
高本 條治
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.123-136, 1995-09

ウナギ料理を注文する際に使われるとされる「ばくはウナギだ。」という文(いわゆる「ウナギ文」)は,多くの日本語文法研究者の関心を集めてきた。ウナギ文に関する記述や説明は,当初は統語論の領域で繰り広げられ,その後,語用論の領域へと徐々に移行してきている。このウナギ文の文法化の問題について,語用論的な観点から継続的に論述していきたいと考えるが,本稿では,どのような観点からウナギ文を考察するかを明らかにし,「ばくはウナギだ」という文に対して,先行研究がどのようなパラフレーズを行っているかを振り返る。