著者
大前 敦巳
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.509-523, 1995

小論は,フランスの社会学者であるP.プルデューが提唱する「社会空間」と「界」の構築という観点から,彼の経験的研究をわが置のケースに活用する可能性を模索する。この経験的研究の目指すところは,観察された可変要素の一つひとつのうちに,不変の要素,つまり「構造」を把握することである。そのために取らなければならない諸規準は,以下のように整理することができる。1.実体論的思考様式に代わって,関係的思考様式を採用すること。2.自生社会学との切断を行なった上で,対象の構成を試みること。3.個別の要素に事実を還元するのではなく,事実の体系的構成を行なうこと。4.位置空間と態度決定空間の同型性と,その相対的な自律について検討すること。5.客観化によって生じた現実との距離を,さらに客観的に把握してみること。もちろん,上記の諸規準は,実際にデータの収集・分析を行なうことを前提にしており,そのかぎりにおいて小論の議論は意味を有することができる。Cet article a pour objet d'explorer la possibilite de realiser dans le cas du Japon les recherches empiriques effectuees par Pierre Bourdieu. Particulierement, j'ai examine les methodes pour construire l' <espace social> et le <champ>. Il est important de saisir, dans chaque element variable observe, des elements invariants, c'est-a-dire la <structure>. Pour prendre cette perspective, il faut adopter les criteres suivants. 1. adopter le mode de pensee relationnel en substituant au mode de pensee substantiel. 2. construire l'objet d'analyse apres avoir coupe la sociologie spontannee. 3. construire systematiquement des faits sans les reduire en chaque element. 4. examiner d'abord l'homologie entre l'espace de positions et l'espace de prises de position, et puis l'autonomie relative de cet espace. 5. objectiver la distance entre le produit de l'objectivation et la realite. Bien sur, ces criteres presupposent que la collection et l'analyse des donnees sont effectivement actualisees. Dans ce cas la, cet article pourra avoir son efficacite.
著者
平野 俊介
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.457-475, 2002

バルトークの初期の作品である〈14のバガテルOp.6〉は,バルトークの純粋な創作から民謡に基づく作品まで実に多様な様式の曲が含まれている。従って,この作品を分析することにより,若いバルトークがどれくらい独自の音楽語法を駆使し得たかを知ることができる。本研究では,各曲の考察を通して,初期のバルトークの変化に富んだ創作過程や音素材の多様な扱いに光を当て,それを明確にすることができた。Fourteen bagatelles are one of Bartok's early works. These pieces are made of various original works and pieces based on Hungarian peasant songs. Therefore, through the analysis of these pieces we can find out Bartok's original methods of composition. As a consequence of this research, through the study of each piece I hav revealed various usage of sound materials and varied creative processes in Bartok's early years.
著者
梅野 正信
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.53-65, 2015-03

日本による植民地支配下及び実質的な統制下に設置されていた中学校,高等女学校,師範学校では,他の諸学校と同様に校友会雑誌が編纂されていた。校友会雑誌は,行政機関や当局の検閲を受け統制されていたが,生徒による記述が掲載されている点で貴重な史料である。本研究では,台湾,朝鮮半島,関東庁,樺太庁,「満洲国」で編纂されていた校友会雑誌に描かれたアジア認識を考察する。これらの諸地域の校友会雑誌は,これまで本格的な研究対象とされてこなかったが,本稿においては,先行研究と比較して史料分析の方法を中心に検討した結果,誌面構成,誌面を統制する行政・軍,学校側関係者の記載欄,散文や修学旅行に関する記載欄など,題目ごとの記述からアジア認識に関わる関連語を抽出する研究,横断的比較研究が可能であること等を確認した。
著者
角谷 詩織 無藤 隆
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.101-112, 2010-02-28

本研究では、テレビ番組の種類として、特に、日本民間放送連盟から放送モラルについての要請が出された経緯をもつ、ドラマ、お笑いのバラエティ、トーク番組、歌・音楽番組の視聴が、子どもの社会的・心理的不適応を高めるのかについて検討する。首都圏40km圏内から無作為抽出された、第一回調査時の小学5年生1,006名を対象とし、2001年2月〜2004年2月の間、毎年1回の縦断的調査を実施した。テレビ要因の他に、子どものメディア所持、テレビゲーム、スポーツや勉強の得意不得意、担任教師との信頼関係、生活習慣、学校の楽しさといった、子どもの社会的・心理的適応に重要な影響力をもつとされている要因を含めた分析を行った。縦断的因果関係を検討するに当たり、小学5年生から小学6年生、中学1,2年生へ、小学6年生から中学1,2年生、中学1年生から中学2年生への縦断的偏相関係を求めた。分析の結果、長期的に子どもの社会的・心理的不適応を高める要因が見出された。児童期後期におけるドラマ、お笑いのバラエティ、トーク番組、歌・音楽番組の視聴は、特に中学生になってからのルール違反傾向や不安傾向を高める要因として機能する可能性が示唆された。「よく見る番組」の要因は、小学5年生から中学2年生にかけて、社会的・心理的不適応状態に比較的安定した影響力を示したことから、その影響が無視できないものであることが推測された。
著者
野村 眞木夫
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.145-156, 2009-02-28

本稿は,日本語の人称表現の多様性を確認し,これが人称の観点から類型化した小説においてどのように使用されているかを考察するものである。人称制限との関係,文末の無標/ 有標の選択,テクストの参加者が中心的か周辺的か等を観点としてテクストを観察し,名詞類の階層性に関する先行研究を参照しながら,日本語の人称表現に使用される名詞にも類似の階層性を仮定し,日本語の人称空間を提案する。In this article, first of all, we confirm the kind of the Japanese person expressions and the type of the novels regarding the combination of person. The problem is how Japanese person expressions are used in novels. The texts are investigated from the next viewpoints : 1) the person restriction; 2)the markedness of the predicates; 3)the centricity of the participant of text. Finally, we argue that the Japanese personal nominals have hierarchy, similar to universal hypothesis. Our hypothesis is as the following figure.
著者
北條 礼子 渡邊 由紀子 熊井 信弘
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.513-526, 2002

本研究の目的は,公立小学校への英語導入に関して,教職の有無によって意識に違いがあるかどうかを明らかにすることである。2000年9月に本学大学院1年生215名(教職経験者134名,教職未経験者81名)を対象に,27項目から成るアンケートを用いて集団調査を実施した。集計結果は,分散分析,因子分析,x^2検定により分析した。その結果,公立小学校への英語導入の利点として,教職経験者は教職未経験者と比べると,英語導入によって,「内容を全体的に捉える力が伸ばせる」とも「広い視野と柔軟な思考力を養える」とも感じていないことが明らかになった。また,公立小学校への英語導入の問題点として,教職経験者,未経験者とも小学校での英語担当日本人教月の不足,1クラスの人数が多すぎることを問題点として捉えていることや,教職未経験者が地域に英語導入は当然という雰囲気があると感じていることがわかった。In 2002, English will be introduced to some public elementary schools as one of the alternatives under the newly started curriculum, General Studies. The purpose of this study is to compare how teachers and students in pre-service training feel about this movement. The survey was conducted in July of 2002 with 215 graduate school students of Joetsu University of Education (134 teachers and 81 teachers-to-be), using 27 questionnaire items. The data were analyzed by ANOVA, factor analysis and a chi-square test. The results revealed that: 1) teachers do not necessarily feel that English will enhance the flexibility of pupils' thinking; 2) both teachers and teachers-to-be feel that there are few Japanese teachers who could teach English at elementary school and that there are too many pupils in one class; and 3) teachers do not feel that introducing English into elementary school is strongly expected by pupils' parents and communities.
著者
増井 三夫 宮沢 謙市 海野 浩 大石 義敬
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.199-215, 2005-09-30

本稿はJ.ハーバーマスのコミュニケイション的行為研究法の開発研究第2報になる。中学生の逸脱行為をインタビューからどこまで叙述できるか。この方法の開発が今回試みられる。ここで採用される分析方法はテキスト解釈学の方法でインタビューはテキストとして扱われる。従来はエソノメソドロジーが有力な方法であった。たしかにその方法では生徒の規範的行為は解釈できる。しかし逸脱行為は日常生活世界における事実認識・規範意識・身体表現の諸相が様々な場面に未分化な形で現れる。エソノメソドロジーではこの<状況>を叙述することは難しい(増井他(1):235以下)。本稿はこの複雑で未分化な行為<状況>をコミュニケイション的行為研究法で分析を試みた。分析は逸脱行為の<状況>をその行為の意味づけによって構成した。かかる<状況>では逸脱者が主役となり周りの生徒が観客となる「親密圏」が生み出されており,それは逸脱者に「居やすさ」の意味を付与された意味空間であった。
著者
宮下 敏恵 Toshie Miyashita
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.509-518, 2003-03

心理療法の面接場面において,クライエントは否定文を多用すると言われている。同じ意味内容をあらわす場合になぜ肯定文を用いずに否定文を用いているのだろうか。否定文には肯定文にはみられない特徴が存在していると考えられる。不登校の子どもが「学校に行かない」という場合と,「学校に行けない」という場合には心理的意味が異なると考えられる。しかし否定文といっても様々な種類がある。そこで本研究では,2種類の否定文をとりあげ,その影響を比較する。被験者は大学生及び大学院生16名(男性6名,女性10名)であった。平均年齢は23.88歳(SD=3.26)であった。被験者は実験者によりリラクセイションが施行された後,ベースラインを測定された。その後,「あなたの身体は動かない」という否定形暗示文と「あなたの身体は動けない」という否定形暗示文が与えられ,その影響が測定された。身体動揺に関するチェックリスト評定,多面的感情状態尺度の評定が求められた。さらに,野原イメージを浮かべるように求められ,その内容が報告された。結果としては,「動かない」という否定形暗示文が与えられた場合は,身体の動きは減少し,感情面の活動にシフトするという調節の仕方をしていることが示された。「動けない」という否定形暗示文が繰り返された場合は,禁止的,抑制的に作用するということが示された。
著者
我妻 敏博
出版者
上越教育大学
雑誌
上越教育大学研究紀要 (ISSN:09158162)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.653-664, 1998

我が国の聾学校において手話がどの程度導入されているか,その実態を明らかにする目的でアンケート調査を実施した。聾学校100校に調査用紙を郵送し,75校からの回答を得た。調査内容は授業中や授業以外に手話を使っている教師や子供がどの程度いるか,父兄からの手話導入の要望の有無,将来の手話導入計画の有無などであった。調査の結果,全く手話を使用していない聾学校の割合は約35%であった。一方,小学部以上において学校全体で手話を導入している聾学校は全体の約25%あり,一部の教師や子供が手話を使用している聾学校まで含めるとその割合は約65%に達した。父兄からの手話導入の要望,将来手話導入の計画の有無の結果などから,今後手話を導入する聾学校はますます増えるであろうと予測された。手話や指文字を使わず音声言語中心の聴覚口話法が主流であった我が斑の聴覚障害児教育は,現在変貌を遂げつつあると思われた。The purpose of this study is to investigate how many teachers and children are using sign language in schools for the deaf. Questionaire sheets were sent to 100 schools for the deaf and 75 schools answered the questionaire. The results are as follows; (1) In 25% of the schools, sign language is consistently being used throughout both the elementary and secondary departments. (2) Sign language is being used partially in 40% of the schools. (3) Sign language is more popular in western Japan than in eastern Japan. (4) In 40% of the schools, parents of deaf children are requiring the school to use sign language. (5) Tweleve percent of the schools have a plan to use sign language in the future and 68% of the schools are under consideration, excluding the schools in which sign language is already being used consistently. (6) As a conclusion, it is considered that the number of schools in which sign language is used will increase.