著者
鈴木 努
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.564-581, 2006-12-31
被引用文献数
1

山岸俊男は『信頼の構造』 (1998) において, 見知らぬ他者を信頼する人は単なる「お人好し」ではなく, 相手を信頼することで, 社会的不確実性と機会コストに対処しているのであるという信頼の解き放ち理論を展開した.その論証には主に実験心理学的方法が用いられたが, その後の社会調査による検証では必ずしも理論を支持する結果は得られていない.その原因として, 信頼の解き放ち理論は実験室状況を越えた実際の社会状況に適用するにはいまだ理論的整理が不十分であること, また実証研究において用いられたモデルが理論を適切に形式化しえていないことが考えられる.本稿では, 社会ネットワーク分析とカタストロフ理論を用いた数理モデルによって個人の社会環境とその個人が示す不特定の他者への一般的信頼の関係を形式化し, 信頼の解き放ち理論とそれに向けられた諸批判を総合した理論仮説を提示する.<BR>本稿のモデルは, 個人のエゴ・ネットワークとその属するホール・ネットワークの特性により個人の一般的信頼がどのように変化するかを示すカスプ・カタストロフ・モデルである.そこでは個人のもつ多層的なネットワーク領域を想定することで, 高い一般的信頼と緊密なコミットメント関係の両立が可能となっており, それにより実験的方法と社会調査から得られた対立的な知見を総合的に理論化する1つの枠組が提出される.

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