- 著者
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千葉・大金沢活断層調査グループ
- 出版者
- 地学団体研究会
- 雑誌
- 地球科学 (ISSN:03666611)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.6, pp.405-419, 1999
- 参考文献数
- 34
この論文は,千葉市緑区大金沢において発見された活断層についての構造地質学的な記載と生成過程の解明を中心に,その発生時期および東京湾周辺地域における構造発達史上の位置づけをおこなったものである.1.本断層帯は,平行する2本の主断層(正断層)によって,落差9mのグラーベン状構造を示す.2.主断層は,立川ローム層のATまで切り,その直上に崩落堆積物がのる.また,断層をはさんで地層の層厚変化はみられないことから,本断層は約2万年前に1回の活動で形成したことがわかった.3.主断層は幅約数〜50cmの剪断帯を伴う.この剪断帯の内部は,無構造,流動構造,網状構造の3つの領域に区分される.また,これらの領域と密接に関係して3つのタイプの面構造が識別された.主断層F1面の近傍では,母岩の粉砕,すべり量,すべり速度がともに大きく,流動構造や無構造の領域が形成され,F1面から遠い領域では,粉砕,すべり量が相対的に小さく,網状構造や複合面構造が形成されたと考えられる.4.本断層は,東京湾地域における中・後期更新統の最大沈降部に隣接しており,その形態などから基盤断層の地表部への現れである可能性が指摘できる.