著者
渡辺 秀男
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.310-327, 2000-09-25
参考文献数
35
被引用文献数
7

新潟県十日町盆地には,中期更新世〜完新世の河岸段丘群が分布している.本地域の段丘はその中でも,段丘数や面の広さ,比高において,最も規模が大きい所である.各段丘面上には信濃川ロームと,それに挾在する年代推定の鍵となる火山灰層が堆積する.それらの層序と堆積年代から段丘面の形成年代を推定した.その結果,米原II・卯ノ木段丘(15-16万年前)と,朴ノ木坂段丘(13-14万年前)は中期更新世,貝坂I段丘(10〜5万年前),貝坂II段丘(5万年前),正面段丘(3万年前)は後期更新世,また大割野I段丘(1万年前)と大割野II段丘は完新世に形成された段丘である.段丘面の変位は,基盤の隆起運動と向斜構造をつくる運動に規制されている.面の形成年代と比高から,米原II面形成後から貝坂I段丘形成前,正面面形成後から現在までは隆起運動が盛んな時期であった.一方,貝坂I段丘の形成期から正面段丘の形成期までは隆起運動が停滞した時期であった.向斜軸を境界として基盤の構造は,北西翼の方が南東翼に比べ地層の傾斜が急で隆起量が大きい.それに対応して,両翼における段丘面の比高や傾斜,広さが異なり,向斜軸の北西翼では比高が高く傾斜の大きい段丘面,南東翼では傾斜が小さく広い段丘面が形成されている.このことは,段丘面の形成が基盤の活褶曲の規制を受けていることを示している.

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