- 著者
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三木 健
- 出版者
- 日本生態学会
- 雑誌
- 日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.3, pp.240-251, 2006-12-05
- 被引用文献数
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2
生態系の中でエネルギーと物質の動態は、一次生産者、消費者、分解者などのさまざまな機能群によって担われている。各機能群は複数種の生物によって構成されており、機能群全体の特性がどのような要因で決まっているかを明らかにするために、これまで多くの研究がなされてきた。その一つは、「被食-捕食関係」を基本とした機能群間の相互作用に注目した食物連鎖・食物綱解析であり、もう一つは、資源競争を基本とした機能群内の種間相互作用に注目した「生物多様性-生態系機能」研究である。これらの研究は、進化・個体群・群集生態学と生態系生態学との統合へ向けて進んでいる。本論ではまず、これらの研究、とくに「生物多様性と生態系機能の関係」の研究が抱える問題点を3つに分けて整理する。次にこれらの問題を解決するために現在発展しつつある新しい方法論を紹介する。これは、1.注目する機能群を相互作用綱の中に位置づけ、2.機能群内の生物多様性(種数・種組成・種の相対頻度)を所与のものとは仮定せず、生物多様性を決定する要因→生物多様性→物質循環過程という一連の過程に注目し、3.適切な単位を用いて生物多様性・群集構造を記述する、という方法論である。これにより、環境条件の変化→生物間相互作用の変化→群集構造・生物多様性の変化→物質循環過程の変化というステップで、環境条件に対応して形作られる生物群集の構造と群集が担う物質循環過程の特性をともに説明・予測することができる。実験的研究および数理モデルを用いた研究を例に挙げながら、メタ群集過程や間接相互作用網、生物多様性の中立説との関係などの今後さらに解決すべき問題について議論し、群集生態学に基づく物質循環研究の新たな方向性を探る。