著者
水野 江美 西本 実苗 井上 健
出版者
関西学院大学
雑誌
臨床教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.29-36, 2006-03-25

今回の研究では,私立の4年制K大学に通う学生144名(男性64名,女性76名,不明4名)を対象に,(1)UPIと独自に製作した(2)自己肯定感尺度質問紙と(3)ポジティブ・イリュージョン尺度の3つの質問紙による調査を行った。その目的は,日本人のポジティブ・イリュージョンを検討することと,ポジティブ・イリュージョンと心身症状の関連を調査することであった。3つの領域から構成されるポジティブ・イリュージョン尺度の因子分析を行った結果,自己に対するポジティブ・イリュージョンにおいては社交性・知的能力因子,容姿因子,優しさ因子の3つの因子が,楽観主義ではポジティブイベント因子とネガティブイベント因子の2因子が,そして統制力に関しては努力可能因子と運因子の2因子が抽出された。また,自己肯定感尺度でも因子分析を行ったところ,充実感因子と自己価値観因子の2つが抽出された。ポジティブ・イリュージョンは容姿や知的能力には働いておらず,社交性ややさしさ因子や統制力,ネガティブイベントに対しては働くということが分かった。そして,UPIとそれぞれの因子の相関を調べたところ,相関関係は見られず,今回の研究ではポジティブ・イリュージョンと心身症状の関連は認められなかった。また,ポジティブ・イリュージョン尺度の各因子と自己肯定感尺度の因子との関係を見たところ,やはり自己肯定感とポジティブ・イリュージョンには正の相関があり,ポジティブ・イリュージョンが強いほど自己肯定感も強くなるということが言える。また,自己肯定感もポジティブ・イリュージョンにおいても,自分の評価だけではなく,他者との関係の影響を強く受けると考えられる。以上をふまえ,今後は心身の健康に関する質問紙を改良し,特に身体的健康とポジティブ・イリュージョンの関連をもう一度調査しなおしてみたいと思う。

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思い当たるのはポジティブイリュージョンに関しての研究です https://t.co/9dFJLycfCL 論文を見た限りでは先行研究は1999年からあるようですね https://t.co/uXA37HoZhX
ポジティブ・イリュージョン。ほうほう。健康的に生きるには多少なりとも自分に幻想を信じてた方がいいのはそりゃそうだ。 http://t.co/NqXwTU9t
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