著者
太田 莉加 西本 実苗 井上 健
出版者
関西学院大学
雑誌
臨床教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.83-96, 2005-03-25

今回の研究では,私立の4年制K大学に通う学生316名(男性105名,女性211名)を対象に,独自に作成した(1)ペット飼育に関する実態調査と(2)対ペット尺度,そして(3)MPI,(4)GHQ 30,(5)UPIの5種の質問紙を用いて一斉調査を行った。その目的は,大学生におけるペット飼育の実態を明らかにすること,外向性一神経症的傾向といった側面からの飼い主の性格的傾向や,ペット飼育による心身両面への効果を検討することであった。また,対ペット尺度を作成することで,ペット飼育による人への影響が,具体的にはペット飼育のどういった側面と結びついているのかも検討することとした。実態調査から,現在ペットを「飼っている」者は被験者全体の31.6%(100名),「実家で飼っている」者は10.8% (34名),「以前飼っていたが今は飼っていない」者は25.9%(82名),「飼ったことがない」者は31.6%(100名)であることが明らかとなった。飼っている(た)ペットの種類においてはイヌが圧倒的に多く,それは飼いたいペットにおいても同様であった。また,現在ペットを飼っていない人における飼っていない理由としては,住んでいるところがペット禁止であるからといったものが多かった。今回,飼い主とペットとの関係を客観的に捉えるために対ペット尺度を作成したが,それについて因子分析を行った結果,3因子が抽出され,57項目中39項目が選出された。抽出された3因子については,項目の内容からそれぞれ,肯定的感情因子,関係性因子,スキンシップ因子と命名した。ペット飼育とMPI, GHQ, UPIとの関係を見たところ,ペットを飼う人は,飼ったことがない人よりも,神経症的な傾向が強い人やストレッサーに敏感な人が多いのではないかと考えられた。よって,もともとそういった特徴をもった人がペットを飼う傾向があるのではないかと思われた。対ペット尺度とMPI, GHQ, UPIとの関係を見たところ,飼い主の飼育態度と心身状態の関係は,ペットを現在「飼っている」のか,あるいは「実家で飼っているのか」といったことや,飼い主が飼育当時どの発達段階にいる(た)のかといったことと関係しているかもしれないということが考えられた。また,イヌとネコとで飼い主の飼育態度が異なるということ,異なる特性をもつペットを飼う人にも異なる特徴があるかもしれないということが考えられた。これらのことから,ペット飼育のどういった側面が人へ影響を与えているのかといったことについては,ペットを飼育している(た)時期(飼育状況)やペットの種類によって異なるであろうと推測された。以上をふまえ,今後,青年期にあたる大学生を対象に,更なる調査を行い,ペットによる人への影響をより詳細に見ていきたい。
著者
水野 江美 西本 実苗 井上 健
出版者
関西学院大学
雑誌
臨床教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.29-36, 2006-03-25

今回の研究では,私立の4年制K大学に通う学生144名(男性64名,女性76名,不明4名)を対象に,(1)UPIと独自に製作した(2)自己肯定感尺度質問紙と(3)ポジティブ・イリュージョン尺度の3つの質問紙による調査を行った。その目的は,日本人のポジティブ・イリュージョンを検討することと,ポジティブ・イリュージョンと心身症状の関連を調査することであった。3つの領域から構成されるポジティブ・イリュージョン尺度の因子分析を行った結果,自己に対するポジティブ・イリュージョンにおいては社交性・知的能力因子,容姿因子,優しさ因子の3つの因子が,楽観主義ではポジティブイベント因子とネガティブイベント因子の2因子が,そして統制力に関しては努力可能因子と運因子の2因子が抽出された。また,自己肯定感尺度でも因子分析を行ったところ,充実感因子と自己価値観因子の2つが抽出された。ポジティブ・イリュージョンは容姿や知的能力には働いておらず,社交性ややさしさ因子や統制力,ネガティブイベントに対しては働くということが分かった。そして,UPIとそれぞれの因子の相関を調べたところ,相関関係は見られず,今回の研究ではポジティブ・イリュージョンと心身症状の関連は認められなかった。また,ポジティブ・イリュージョン尺度の各因子と自己肯定感尺度の因子との関係を見たところ,やはり自己肯定感とポジティブ・イリュージョンには正の相関があり,ポジティブ・イリュージョンが強いほど自己肯定感も強くなるということが言える。また,自己肯定感もポジティブ・イリュージョンにおいても,自分の評価だけではなく,他者との関係の影響を強く受けると考えられる。以上をふまえ,今後は心身の健康に関する質問紙を改良し,特に身体的健康とポジティブ・イリュージョンの関連をもう一度調査しなおしてみたいと思う。
著者
西本 実苗 下倉 雅行 田中 規久雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.210, pp.11-16, 2008-09-13

情報リテラシー科目の受講生を対象にアンケートをおこない,主に各回の授業内容に対する学生の意識(「面白かった度」「難しかった度」「役に立つと思う度」)に焦点を当てた分析をおこなった.その結果,授業内容の難易度を上げると,学生が「面白い」と感じる程度が低下する可能性がある一方,学生にとって有用性・実用性が高い内容を授業に取り入れると,「面白い」と感じられる程度が上昇する可能性があることが分かった,また,授業の早い段階である程度のタイピングの習熟度を確保することが,その後の授業で扱う内容に興味を持たせるために効果的であることが推察された.