著者
紀國 洋
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.385-395, 2007-01

本稿は,銀行間のATMネットワーク提携のインセンティブを複占の水平的製品差別化モデルを用いることにより分析している。各銀行はATMネットワーク規模を拡大させることにより,自己の供給する口座サービスの価値を高めることができる。しかし,水平的差別化競争下においては,ネットワーク効果を享受するためには,ライバルのネットワーク規模よりも上回らなければならない。モデル分析から本稿が得た主要な結論は次のとおりである。(1)銀行間提携によってネットワーク規模が拡大したとしても,相対的な観点からはネットワーク効果は互いに打ち消しあってしまう。従って,銀行間のネットワークの提携は,それによるネットワーク規模の増加分が,相手に比べて大きい銀行に有利に働き,小さい銀行に不利に働く。それ故,提携前のネットワーク規模が大きい銀行には提携のインセンティブがない。(2)ネットワークの提携により産業全体の利潤が増加するケースが存在する。その場合,適切な金銭的移転スキームの採用により,両銀行の利潤を増加させるような提携が可能である。(3)たとえ,ネットワーク提携が可能であったとしても,社会的厚生の観点からは提携の私的インセンティブは常に過少である。

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こんな論文どうですか? 金融機関におけるATMネットワーク提携の分析(紀國 洋),2007 https://t.co/m4MekNBETE 本稿は,銀行間のATMネットワーク提携のインセンティブ…

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