- 著者
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荒井 眞一
佐野 郁夫
- 出版者
- 北海道大学大学院経済学研究科
- 雑誌
- 經濟學研究 (ISSN:04516265)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.2, pp.29-47, 2014-01-24
再生可能エネルギーの導入先進国であるスペインは,ECの主導による電力の自由化を背景に,固定価格買取り(FIT)制度の導入という制度的な施策と再生可能エネルギーコントロールセンターによる出力の制御という技術的な対応により全電力量の約30%を風力や太陽光,太陽熱等の再生可能エネルギーで供給している。そして再生可能エネルギー産業は,温室効果ガスの削減ばかりでなく,化石燃料の輸入の低減と風力発電施設の輸出,経済成長の促進,雇用の創出や地域の活性化に寄与している。しかし一方で,買取りや電力の価格設定方法の問題から過去に「太陽光バブル」を経験し,さらに現在は,電力価格の政府による統制によって電力会社の赤字が累積し,固定価格買取り制度は事実上停止している。加えて,エネルギーサステイナビリティ税の導入等によって,固定価格買取制度の根幹に触れる対応である,既存の施設に対する実質的な買取価格の引下げを実施している。本論文は,これらの状況を分析し,我が国の再生可能エネルギー導入促進に当たっては,電力料金制度の透明性の確保や発電コストや導入量等の状況に応じた柔軟なFIT制度の運用等が重要であることを示した。