- 著者
-
山口 律子
- 出版者
- 園田学園女子大学
- 雑誌
- 園田学園女子大学論文集 (ISSN:02862816)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, pp.139-156, 2006-01-31
紅花染めは、昔から寒中の染めがよいと言われてきた。寒中と言わないまでも寒い季節に染色するのがよく、夏期は、紅花の染液が変質しやすいため、夏期の紅花染めはしない方がよいとされている。また、寒中の紅花染めは、色が冴え、最も色鮮やかに染め上がるのに対して、夏期の紅花染めは、色相が濁った色になりやすい。そこで、紅花染めの効果的な染色方法を見出すため、紅花染めにおける紅色素の抽出温度、および紅色素抽出液による染色温度の影響について検討した。1.紅花染めにおいて、紅色素の抽出温度を10℃から30℃の間変化させても、染色布の赤み、黄みの割合は、ほとんど変化しないことが認められる。2.紅花染めにおいて、黄色素の抽出除去が十分で、紅色素抽出液による染色温度を10℃に設定する場合、紅色素の抽出温度は、20℃以下で行うのが、効果的であると思われる。しかし、黄色素の抽出除去が不十分である場合、紅色素の抽出温度が20℃では、染色布は色がこく、濁った色になることが認められる。これは、黄色素の抽出除去が不十分であるため、紅色素の抽出の段階で、紅色素の抽出温度が高いほど、紅色素以外の他の色素の抽出が増加すると考えられる。従って、紅花染めにおいて、黄色素の抽出除去が不十分である場合、紅色素の抽出温度は、10℃以下の低い温度で行うのが効果的であると思われる。3.紅花染めにおいて、紅色素抽出液による染色温度が上昇するに従って、染色布の赤みは、多くなる傾向が認められる。4.紅花染めにおいて、黄色素の抽出温度、紅色素の抽出温度が最適であっても、紅色素抽出液による染色温度が20℃以上では、染色布は、明度が低くなり、色がこく、濁った色になることが認められる。これは、紅色素抽出液による染色温度が高いほど、紅色素以外の他の色素の染着量が増加するためと考えられる。また、黄色素の抽出温度、紅色素の抽出温度が最適である場合、紅色素抽出液による染色温度が10℃では、染色布は、明度が基準試料よりも高くなり、色はうすいが、冴えた、澄んだ色になることが認められる。従って、紅花染めにおいて、紅色素抽出液による染色温度は、10℃以下の低い温度で行うのが効果的であると思われる。