- 著者
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キスチャック ウィリアム
Kischuck William
- 出版者
- 川村学園女子大学
- 雑誌
- 川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.1, pp.190-178, 2006-03-15
カナダ人の女性作家、シーラ・ワトソン(Sheila Watson, 1909〜1998)作の短編を試訳する。シーラ・ワトソンは詩を一編、短編を六つ、それから二つの小説を発表した。今回取り上げた短編はAntigone(「アンティゴネ」)、である。Antigone(「アンティゴネ」)はワトソンの小説、名著The Double Hookと同年(一九五九年)に出版された。Antigone(「アンティゴネ」)は、ギリシャ神話に見られる名前を持つ登場人物の物語りだが、物語りの場所はカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州にある精神病院とその周辺である。ナレーターが自分の父親を紹介することから始まる。父親は精神病院の院長を務めていると思われる。ナレーターのいとこに当たる少女二人、アンティゴネとイスメーネーをも紹介する。それから、物語りはアンティゴネが少女の頃、精神病院の敷地内にスズメの死体を埋葬する場面に移る。少年少女の三人に加えて、精神病院の女の患者であるカリストーの参列に恵まれ、お葬式は少年なりに厳粛に行われている。しかし、院長が姿を現し、この土地は公共の土地だ、とアンティゴネたちの行っているお葬式に反対をする。物語りの最後に、アンティゴネとナレーターの父親(院長)との間に生まれる同情、ナレーターの父親の寛大な態度は印象に残る瞬間である。