著者
キスチャック ウィリアム Kischuck William
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.151-166, 2005-03-15

シーラ・ワトソン(Sheila Watson, 1909年〜1998年)作の短編を試訳する。ワトソンは詩を1編,短編を6つ,それから2つの小説を発表した作家である。取り上げた短編は1956年に出版された. The Black Farm -A Modern Allegory-(「黒農場」)である。「黒農場」は,ギリシア神話にある名前を持つダイダロスの自滅までの経緯を描く物語である。オイディプスという名前の甥が刺激の一つとなり,ダイダロス叔父が黒農場を建設する野望に燃え上がる。周りの家族の皆と複雑な関係にあるダイダロスは,やがて黒農場に引き龍る。親戚が手を差し伸べようとする時に,ダイダロスは放牧場に火を付ける。シーラ・ワトソンは,名著,The Double Hookの作家であると共に,「黒農場」のような力作をも残した。俳優である執筆者は,極めて小規模でありながら,ワトソンの作品を舞台の上で演じることに努めており,ワトソンの作品の持つ演劇的な力を伝えようとするところである。
著者
キスチャック ウィリアム Kischuck William
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.190-178, 2006-03-15

カナダ人の女性作家、シーラ・ワトソン(Sheila Watson, 1909〜1998)作の短編を試訳する。シーラ・ワトソンは詩を一編、短編を六つ、それから二つの小説を発表した。今回取り上げた短編はAntigone(「アンティゴネ」)、である。Antigone(「アンティゴネ」)はワトソンの小説、名著The Double Hookと同年(一九五九年)に出版された。Antigone(「アンティゴネ」)は、ギリシャ神話に見られる名前を持つ登場人物の物語りだが、物語りの場所はカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州にある精神病院とその周辺である。ナレーターが自分の父親を紹介することから始まる。父親は精神病院の院長を務めていると思われる。ナレーターのいとこに当たる少女二人、アンティゴネとイスメーネーをも紹介する。それから、物語りはアンティゴネが少女の頃、精神病院の敷地内にスズメの死体を埋葬する場面に移る。少年少女の三人に加えて、精神病院の女の患者であるカリストーの参列に恵まれ、お葬式は少年なりに厳粛に行われている。しかし、院長が姿を現し、この土地は公共の土地だ、とアンティゴネたちの行っているお葬式に反対をする。物語りの最後に、アンティゴネとナレーターの父親(院長)との間に生まれる同情、ナレーターの父親の寛大な態度は印象に残る瞬間である。