著者
諏訪 正明
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.269-278, 2006

皇居,赤坂御用地および常盤松御用邸で採集されたハナバエ科の標本を検し,それぞれ11種,20種,7種を認め,合計23種を報告した.皇居からはすでに13種のハナバエが記録されているが,これらはすべて今回も上記3ヶ所のいずれかから確認された.これら23種の多くは本州の平野部から低山帯に普通の種であるが,いくつかの特筆すべき種の存在も明らかとなった.ジャガイモモグリハナバエPegomya dulcamaraeはこれまで日本では北海道のみから知られていた.Botanophila kitayamaeは模式標本産地の京都北山以外には栃木県那須御用邸の記録があるのみで,雌についても未発見であった.今回は雌雄を確認することができ,雌についてはじめて記載した.雄1個体に基づいて新種Chirosia asymmetricaを記載した.本種は左右非対称の生殖器節を有することによって北米産C. gleniensisおよびチベット産C. laticercaに近縁と考えられるが,いくつかの形態的差異によって後2者とは識別しうることを示した.

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