- 著者
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奥田 俊博
- 出版者
- 九州女子大学・九州女子短期大学
- 雑誌
- 九州女子大学紀要. 人文・社会科学編 (ISSN:09162151)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.1, pp.73-86, 2006-09
正倉院文書に見える複数の字体を有する助数詞の多くは、偏や旁などの一部分が共通する字体になっている。これらの助数詞の中で、「條」と「条」、ならびに「〓」と「斗」は、異なる字義を担っていない点で、他の複数の字体を有する助数詞と性質を異にする。さらに、「條」「条」と「〓」「斗」の間においても用法に差が窺える。「條」は律令制公文に多用され、「条」に比して規範性が強い字体であるのに対し、「〓」「斗」は、(イ)「〓」が使用される場合、一般的に大字が上接する、(ロ)「斗」が使用される場合、大字・通常字のいずれも上接する、(ハ)小書においては「斗」が使用され、通常字が上接する、といった傾向が認められ、「斗」が「〓」に比して規範性が強い。ただし、「〓」が、同じ物のかさの単位である「斛」と対応しながら大字に下接する点を勘案するならば、書記者によっては、「〓」に規範性を持たせようとする意識が働いていたものと考えられる。