著者
別府 哲
出版者
全国障害者問題研究会
雑誌
障害者問題研究 (ISSN:03884155)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.259-266, 2007-02
被引用文献数
1

誤信念理解で調べられる心の理論と、その発達的前駆体と想定される共同注意についての研究をレビューし、自閉症児がどのような機能連関でその能力を形成するのかを検討した。その結果、自閉症児においては、心の理論は、直観的心理化を欠いたまま言語による命題的心理化によって、共同注意は、社会的刺激への反応傾性に弱さを持ったまま汎用学習ツールによって、それぞれ補償することで形成されることが明らかになった。命題的心理化と汎用学習ツールは、認知能力に依拠しており、直観的心理化や社会的刺激への志向性は、意識下の情動と半ば生得的な社会的刺激への反応傾性に基づくと考えられる。この言語を中心とした認知発達による補償という機能連関は、健常児や知的障害児においてはみられず、自閉症の特異性を示唆する仮説と考えられた。この知見を自閉症の教育支援に適用する場合、情動共有を含めた相互主観的経験を教育的に保障することの重要性が示唆された。

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